1961年、ジュネーブショーにて華々しいデビューを飾ったEタイプは、美しいボディラインのみならず、
当時としては夢のような最高速度240km/hを標榜し、人々の憧れの的となった。
ボディーはオープン2シーターとクーペの2つから選ぶことができた。前者はロードスターの名で呼ばれることが一般的である。
エンジンは内径φ87mm×行程107mmで3,781cc、圧縮比9.0、直6DOHCのXKエンジンに3連SUキャブレターを搭載し
モス製の4速MTの組み合わせで265hp/5,500rpm、36.0kgm/4,000rpmと発表されたが、同様のエンジンを積むジャガーMk-2が
ツインキャブではあるものの220hp/5,500rpmであるところから現在では疑問視されている。
ブレーキはダンロップ製のディスクブレーキ、サスペンションは4輪独立懸架(フロントがダブルヲッシュボーンにトーションバー、
リアは2本ずつのショックアブソーバーとコイルスプリングを備えた変形ダブルウイッシュボーン)を採用していた。
なおこの形式はXJシリーズにも踏襲され、少しずつ形を変えながら1990年代まで生き永らえた。ステアリングはラックアンドピニオンであった。
ホイールはセンターロック式のワイヤーホイールが標準で用意されていた。
このモデルにおいては容量不足のブレーキと、古い設計で1速がノンシンクロであったモス製トランスミッションが不評だった。
最初期のモデルには通称「フラットフロア」と呼ばれるモデルが存在する。これは運転席床パネルが文字通りフラットなモデルで、
発売開始から1年も作られていないためマニアの間ではかなりの希少価値があるとされている。
しかし実際は運転の際にペダル操作がしにくくなっている。これ以降のモデルはフットウェル(かかとを置くスペース)が設けられ、
フロアは若干下に飛び出ることとなり、外観からも見分けることが可能である。
シリーズ1 4.2リットル
1964年10月にシリーズ1はマイナーチェンジを受けた。主な変更点はエンジン、トランスミッション、内装、そしてブレーキである。
しかし見た目にはほぼ何も変わっていなかった。
エンジンは内径φ92.1mm×行程106mmで4,235ccへと排気量を引き上げられた。最大出力こそ265hp/5,400rpmであったが
最大トルクは39.1kgm/4,000rpmと大幅に向上し扱いやすくなった。キャブレターにも若干の変更があり、廃棄マニホールドも若干の変更を受けた。
モス製トランスミッションは自社製のフルシンクロ4速
MTへと換装され、すばやいシフト操作が可能となった。
ブレーキはダンロップ製からロッキード製へと変わり、パフォーマンスは若干向上した。
見た目に最も変わったのは内装である。シート形状は見直され、薄いバケットシートからたっぷりとしたクッションの容量を持った
シートへと変更された。また内装に使われていたアルミパネルは姿を消し、センターパネルは黒のビニールで覆われた。
コンソールボックス兼肘掛も設置された。いずれもグランドツアラーにふさわしい変更であり、快適性は飛躍的に向上した。
元来、ロードスターではトランクリッドに、クーペではテールゲートに設置されていた「Jaguar」のエンブレムに加え、
そのエンブレムの上に「E Type」、下には「4.2」のエンブレムが追加された。
なお1966年のジュネーヴショーで2+2がデビューしロードスター、クーペと併売された。これは2人乗りクーペのホイールベースを伸ばし、
さらにルーフラインを高くすることによって+2の後席を稼ぎ出したモデルである。このモデルはホイールベースの延長により
ドライブトレーンを搭載するスペースにゆとりができたため、4速MTに加えてボルグワーナー製3速ATを選択できるようになった。
このモデルは後席とATにより更に実用性が高まり、更なる顧客を増やすことに貢献した。
シリーズ1 4.2リットル