本機も私のお気に入りブランドAurexのハイC/Pの実力機アナログレコードプレーヤーです。
インダストリアル/プロダクトデザイナー デザインディレクターの川崎和男氏の東芝Aurex時代の作品のSR-370の廉価版姉妹機といえるでしょう。
AurexといえばSY-Λ88Ⅱプリアンプなどのアンプは非常に有名ですがレコードプレーヤーもSR-M99のような凄い製品を作っていました。
完全主義、物量主義で採算を度外視した見た目のデザインより音質を追及した製品のイメージですが
本機やSR-370はその中では珍しく見た目のデザインも白い大理石風の非常に美しい物になっています。もちろん物量主義のAurexですから
音を追求して素材から開発した結果とても綺麗な大理石を思わせるADソリッドという合成樹脂に辿り着いたのでした。
合成樹脂といってもいわゆるプラスチックとは違って天然の大理石のように硬く、重く
しかも大理石や金属とは違いウッドキャビネットに近い内部損失というまさに音響に最適な素材です。
当時DENONは天然大理石を使ったプレーヤーを出していましたが、大理石は硬く重いのは良いのですが
内部損失が小さく振動減衰性が悪いため必ずしも音響素材としては最適ではなかったのです。
本機も川崎氏が手がけておられたと推察しますが、無骨なデザインの多いAurex機の中でもこの美しさは川崎氏の功績ではないでしょうか。
テクニクスやSONYなども同様の素材を採用していましたが東芝以外は黒い素材で目立たないようシャーシや裏蓋などに使われたのです。
川崎氏はデザイン担当でしたがオーディオの技術的な所ももちろん造詣は深いようです。
私のオーディオの師匠の故長岡鉄男氏とは微妙に路線は違うようですがAurexの完全主義物量主義については川崎氏も長岡氏も同じ考えのようです。
この路線を突き詰めていって、後にSR-M99のような超弩級プレーヤーを作り上げたのでしょう。
本機には同型でプラッターが本体と同様のADソリッド製と一般的なアルミダイキャスト製の2つがあります。
今回の出品はアルミダイキャスト製プラッターです。
ダイレクトドライブのDCサーボモーターは当時の多くのメーカーに供給された、定評の松下製です。
同型のモーターにはバリエーションはありますが、テクニクス機はもちろん、ビクター、ヤマハ、パイオニア、三菱、日立、マイクロなどの各社が採用しました。
今回は新品時に付属していた純正カートリッジC-230M(純正シェルつき)が付属します。針の使用時間はわかりませんが問題なく良い音が出ています。
また、即決で購入された方には特典として純正針をお付けします。開封済みなので新品ではないと思いますが問題なく使えるようです。
本機も私の特にお気に入りで複数入手した中で動作に問題なく綺麗なものを簡単にメンテナンスしました。
モーターはローターを外して古いオイルをふき取り新たに超潤滑性の特別なオイルを注油しました。
回転調整ボリュームは信頼できる接点復活剤を複数使い分けて使用、接触不良はなくとてもスムーズに調整できます。
スイッチ類も同様に接点復活剤にてクリーニング。接触不良はありません。
ストロボスコープもネオンランプはしっかり点灯して問題なく止まります。
本機は傷、汚れなどは少なく綺麗でしたが、さらに全体を特殊なクリーニングワックスで磨きまました。
ダストカバーもコンパウンドで磨きクリーニングワックスで仕上げました。かなりクリアーですがヒビやキズがあります。
ヒビは割れが進まないよう接着補修しました。
その他、アームやヒンジなどの金属部も金属磨きクロスなどで磨いてピカピカです。
アームはいちど取り外して丁寧にメンテナンス。軸部もクリーニングして感度良好です。
古いプレーヤーではアームの軸部はタバコのヤニなどで感度の低下した物がよくあります。
これはクリーニングする事で驚くほどスムーズに回転するようになります。
アームリフターもグリス交換してゆっくりスムーズに降下します。使いやすいダイヤル式アンチスケーティングも問題ありません。
また、少し面倒ですがストロボパターンも磨いてワックスをかけてあるのでとてもくっきりと明瞭に表示します。
その他目立つ傷、錆、腐食などは僅かです。この素材はクリーニングすると驚くほど綺麗になりますね。
また木部にもほとんどキズや劣化はありませんがこの後も劣化しないようクリアー塗装を施しました。底板も同様にクリアー塗装をかけてあります。
添付画像をよくご覧になってご検討ください。写真は下手で申し訳ありませんが多めにupしておきました。
その他、回転も安定してストロボスコープも33/45回転も問題なく止まり、調整もスムーズに行えます。
また、劣化しやすい脚のインシュレーターのゴムは特に問題ありません。ゴムシートはクリーニングして保護剤をかけてあります。
付属品は純正カートリッジC-230M(純正シェルつき)純正品のゴムシート、海外版マニュアルのコピーです。
取扱説明書はありませんが海外版マニュアルのコピーをお付けします。英文で若干の仕様に違いはありますがご了承ください。
また、即決で購入された方には純正交換針をお付けします。
本機のカートリッジの純正針はウルトラCと呼ばれるダイヤモンドではなくサファイアでダイヤ並みの寿命という物です。
とはいえダイヤ同等ではないでしょう。この後交換針が必要でしたらナガオカ製の普通のダイヤを使った物の方が良いでしょう。
オート機構など全く無いマニュアル式ですので慣れた方なら問題ありませんが、はじめてレコードプレーヤーをお使いになる方は
アームのバランスのとり方や針圧の掛け方、アームの高さの合わせ方
カートリッジの取り付け方など一般的なプレーヤーの使い方をよくお調べになってからお使いください。
よくプレーヤーで問題になるのはカートリッジの取り付けによる接触不良とアームの高さ調整ですね。
この機種はクォーツロックになる前の機種ですので回転が安定しないのではとお気になさる方も居られるかと思いますが
私が多数のプレーヤーを使ったところでは全く問題ないと確信します。
クォーツロックでないと音が変化するとかクォーツの方が音が良いとかはありません。クォーツなら調整がいらないというだけです。
ストロボが安定して止まらないと気にされる方も居られるかと思いますが、ストロボは電源の50Hzまたは60Hzの明滅を利用しているので
目安にすぎません。実際には電源周波数はその地域の電力使用量によっては微妙に変化するのです。
発電所はその変化をできるだけ少なくする努力はしていますがクォーツ並みにする事はできません。
DCサーボモーターですからプラッターの回転数は電源周波数には影響されません。周波数で変化するのはストロボの明滅周期です。
この変化を回転の変化ととらえて頻繁に回転調整をするとボリュームが劣化してしまいます。
レコードプレーヤーは本機のように丁寧に作られていれば、まず良い音がします。
その中ではアームの影響は大きいかもしれません。
機能的で美しいアームは良い音がするものです。
実は上級機のSR-370にはアンチスケーティングはありませんのでこちらの方がアームは上等なんですね。
小さめの本体ながらとても重く硬く鳴きにくいキャビネットの効果は間違いなく音に現れていると思います。