基本情報|Release Information
交差する音楽地図のなかに刻まれた1930年代の幻想地形図。
レーベル:Victor His Master’s Voice
品番:A-1360
フォーマット:SP盤(78rpm, 10inch, Shellac)
国:日本(または輸出用仕様)
録音日:「La Rosita」1934年3月9日録音(Bright's Hollywaiians)
タグ:Hawaiian, Tango, Shellac, 1930s, Dance Orchestra, Cross-Cultural
作品の解読|Decoding the Work
この一枚に刻まれているのは、1930年代世界を縦断する音楽的偏移の軌跡である。A面「La Rosita」は、ハワイ出身の音楽家Sol K. Bright率いるBright's Hollywaiiansによるインストゥルメンタル。1934年3月9日に録音されたこの楽曲は、ハワイアン・スチールギターを中心に据えた編成ながら、リズム構造はラテン・タンゴと交差し、太平洋からカリブへと至る幻想的地政学を音でなぞるような構成を取る。明快なメロディと揺れるスライド奏法、そして小編成ながら豊かなハーモニクスは、当時の「異国の響き」需要に応える輸出音楽の典型ともいえる。
一方B面「The Black Orchids」は、ハンガリー出身のヴァイオリニストDajos Bla(芸名Von Geczy)によるヨーロッパ産サロンタンゴ。名義は「Von Geczy」のみだが、背後には戦間期ベルリンで活動したダンス・オーケストラの様式美が横たわっており、洗練されたストリングスと管楽器の呼吸の中に、ヨーロッパ的装飾主義と国際軽音楽の融合を見ることができる。タイトルが示唆するように、黒い蘭という人工的でエロティックな象徴が、タンゴの構造の中で滑らかに展開されていく。
Victor “His Master’s Voice”レーベルから発表されたこのSP盤は、単なる両A面の寄せ集めではない。ハワイとヨーロッパという一見遠い音楽文化が、1930年代のグローバル・ダンス市場においていかに隣接していたか、そしてその響きが如何に商品として構成され、再生されたかを知るための、重要な物的証言である。音の旅として、また制度的録音史の一断面として、本盤は多層的な読解を許容するアーカイヴである。
状態詳細|Condition Overview
Von Geczy - THE BLACK ORCHIDS 面に画像3枚目のような傷があります。深くはありません。
その他、全体的にやや汚れがありますが大きなお傷みはありません。
支払と配送|Payment & Shipping
発送:匿名配送(おてがる配送ゆうパック60サイズ)
支払:!かんたん決済(落札後5日以内)
注意事項:SP盤の特性上、再生には専用の針・トーンアームをご使用ください。経年によるノイズや歪みを含む古い記録媒体としての性質をご理解のうえ、ご入札ください。ノークレーム・ノーリターンにてお願いいたします。