NHK日本古典文学講読全集
CD全16枚揃 解説書付
お伽草子 宇治拾遺物語 竹取物語 好色一代男 今昔物語集
古典講読は、古典文学の魅力あふれる世界を、ていねいな「解説」と「朗読」で読み解いていくNHK名番組です。古典文学の魅力を存分に語り、いまを生き抜くヒントに満ちた古典文学の世界へようこそ!
お伽草子 CD全2枚揃
講師:徳田和夫 朗読: 坂井清成 守屋政子
古くからのお伽話によるものも多いが、たとえば『猫の草子』のように成立が17世紀初頭と見られるものもある。また、『平家物語』に類似の話が見られる『横笛草子』のように他のテキストとの間に共通する話もある。『道成寺縁起』のように古典芸能の素材になったり『一寸法師』のように一般的な昔話として現代まで伝えられるものもある。『一寸法師』や『ものぐさ太郎』、『福富太郎』などは、主人公が自らの才覚一つで立身出世を遂げ、当時の下克上の世相を反映する作品といえる。物語の設定に着目すると、時代は現在から神代の昔に至るまで様々であったのに対し、舞台は特定の場所が設定されている事がしばしば見受けられる。特に清水寺は、現存するお伽草紙作品のうち約1割に当たる40編に登場し、中世の人々の神仏に対する信仰や、縁起譚・霊験譚への関心の高さが窺える。一方で、鳥獣魚虫や草木、器物など人間とは類を異とするものが主人公になることも多く、「異類物語」と呼ばれる。その中には百鬼夜行絵巻のような、妖怪を描いた作品も含まれている。
御伽草子の多くは挿絵入りの写本として創られ、絵を楽しむ要素も強かった。文章は比較的易しい。筋は多くの説話がそうであるように素朴で多義的であり、複雑な構成や詳細な描写には乏しい単純なものが多い。しかし、そのことをもって、御伽草子全てを婦女童幼の読み物であると断定するべきではなく、物語が庶民に楽しめるものになっていったこの時代に、色々な創作・享受の条件が複雑に重なった結果、御伽草子のような形の物語群が生まれたと思われる。面白さの裏にある寓意に当時の世相が垣間見られ、中世の民間信仰を理解す
宇治拾遺物語 CD全8枚揃
講師:三木紀人 朗読:加賀美幸子
『宇治拾遺物語』は鎌倉時代前期に成立したと考えられる編者未詳の説話集だ。説話とは短編物語のことで、それに対して中長編物語としての『竹取物語』や『源氏物語』などが存在する。
『宇治拾遺物語』は謎めいた序文を持ち、本編はというと読経の名人である道命阿闍梨と、恋多き和泉式部が密会していたところに思わぬ訪問者がやって来る第1話から始まり、最終197話では儒教の祖孔子様が大盗賊盗跖の生きかたを変えさせようと訓示をたれに行って怒鳴りつけられ、ほうほうの体で帰るときにたびたび落馬しそうになったというなんとも気の毒な話で終わる。
『宇治拾遺物語』は完全に割り切ることのできないこの世の理不尽やもやもやをも取り込みながら、ときに真剣に、ときに読者の予想をはぐらかしながら繰り広げられていく説話集だ。
竹取物語 CD全2枚揃
講師:神野藤昭夫 朗読:加賀美幸子
物語の元祖と言われている「竹取物語」。天上界と人間界が交差する神秘や、悲哀をおびた人間模様を、平安時代の社会背景などの情報も盛り込みながら、味わう。
好色一代男 CD全2枚揃
講師:中嶋隆 朗読:西橋正泰
『好色一代男』は、江戸時代前期、1682年(天和2年)に刊行された日本の文芸作品。井原西鶴の処女作であり、浮世草子の嚆矢とされる。享楽的な上方の大町人の家に生まれた男・「世之介」こと浮世之介が、7歳にして恋を知り、幾多の恋愛経験を経て、浮世の好色を尽くしたあと、60歳におよんで女護ヶ島に舟出するまでの54年間の生涯を描いた一代記。当時、仏教思想や儒教道徳から罪悪視されていた愛欲を、町人らしい生きた思想や感情で肯定的に描いた画期的作品と位置づけられる。構成および主人公の設定は、『源氏物語』や『色道大鏡』からの影響を受けている。
今昔物語集 CD全2枚揃
講師:神野藤昭夫 朗読: 加賀美幸子
『今昔物語集』に想を採った近代作家は多い。中でも大正時代の芥川龍之介による『羅生門』と『鼻』は有名。河合隼雄によると、『今昔物語集』の内容は「昔は今」と読みかえたいほどで、ひとつひとつの物語が近代を超える知恵を含んでおり、その理由としては、当時の日本人の意識が外界と内界、自と他を区別しないまま、それによって把握された現実を忠実に書き止めている点にあるとしている。ポストモダンの問題意識は、それがデカルト的(心身二元論的)切断をいかに超越するかにあり、その点で『今昔物語』は真に有効な素材を提供するとしている