
新書です。 きれいなほうです。
文明の興亡は、人類・民族の大移動がきっかけだった?
大航海時代・産業革命期を制した真の勝者は?
ヨーロッパをはじめとする先進国が、難民を排除できないのはなぜ?
いま、世界中で議論の的となっている「移民」をキーワードに、経済史研究の俊英が世界史をすっきり明快に読み解く一冊。
第1部 人類・民族の「大移動」とは何だったか
第2部 世界の「交易」はいかに結びついたか
第3部 ヨーロッパ繁栄は「移民」がもたらしたか
―「はじめに」より
戦争や迫害、さらには奴隷になったため、「移民」となることを余儀される人たちは、昔から多かった。
彼らは、苦労もあっただろうが、移住した先で自らの持つ技術・文化などを伝え、社会そのものを新たに変貌させることに貢献してきた。
世界史とは、こうした「移民」が築き上げてきたものの集積だと言って過言ではあるまい。
(中略)本書が、人の移動を通して、長期的な視野で世界史から現在の社会を考えるヒントになれば幸いである。
目次
はじめに
●第1部 人類・民族の「大移動」とは何だったか
第1章 文明はどのように伝播したか
「世界最初の移民」とは/六大文明の誕生
「移民」が文明を?いだ/「王の道」は一日にしてならず
古代エジプトとフェニキア人
第2章 太平洋を渡った人々の謎
海上ルートでの移動開始/航海者による島のネットワーク
誰が古代アメリカ文明を築いたか/日本列島への到達
●第3章 誰がヨーロッパ文明をつくったか
ギリシア文明はオリエント文明の一部に過ぎない
植民市建設に積極的だった理由
ペルシア戦争にギリシアは勝利したか
アレクサンドロス大王の遠征と「移民」
交易の民・フェニキア人の役割とは
大帝国へと成長する古代ローマ
こうしてヨーロッパはオリエントを忘れた
●第4章 遊牧民から文明の興亡を考える
世界史の主役としての遊牧民
スキタイ人、匈奴、フン人
「ゲルマン民族の大移動」はなぜ起こったか
渡来人はなぜ日本にきたか
ユーラシア大陸を支配したモンゴル帝国
黒死病流行の原因はモンゴル帝国?
第2部 世界の「交易」はいかに結びついたか
●第5章 ヨーロッパを包囲したムスリム商人
台頭するイスラーム/正統カリフ時代からウマイヤ朝へ
「アッバース革命」という転換点/「商業の復活」は大きな誤り
世界中に移り住んだムスリム商人
●第6章 商業の民として活躍したヴァイキング
北の海を統一したのは誰か/拡大するヴァイキングの商業圏
イングランドを征服したノルマン人/北海帝国を築いたデーン人
ヴァイキング活躍を支えたロングシップ
「商業の復活」とヴァイキング
●第7章 ポルトガルは大航海時代の敗者ではない
莫大な利益を生んだサハラ縦断交易
レコンキスタから大航海時代へ
ポルトガルのアジア進出/ニュークリスチャンの動向
密貿易で潤ったイエズス会
新世界に広がる貿易ネットワーク
ポルトガルは「敗者」ではなかった
●第8章 異文化間交易圏としてのアジア
イスラーム化する東南アジア
永楽帝と鄭和の遠征/貿易拠点としての琉球
琉球はなぜ中国との関係を続けたか
ポルトガル人とアジア/徳川幕府による近代的な貿易政策
南洋日本人町の位置づけ
●第9章 黒人とユダヤ人が起こした「砂糖革命」
「砂糖革命」とは何か/大変動する環大西洋世界
大西洋奴隷貿易と人口増の関係/オランダの新世界進出
技術伝播のカギとなったセファルディム
第3部 ヨーロッパ繁栄は「移民」がもたらしたか
●第10章 アルメニア人から見た産業革命
アルメニア商人のネットワーク
ユーラシア大陸でのアルメニア人の活躍/綿はいかに取引されたか
職人としてのアルメニア人/ヨーロッパ人は何を手に入れたか
●第11章 大英帝国に拡散したスコットランド人
大英帝国の複雑な成り立ち/移住するスコットランド人
ヨーロッパからアメリカへの移民/スコットランド人が果たした役割
お雇い外国人とスコットランド人/大英帝国崩壊で何が起こるか
●第12章 ヨーロッパ人はなぜ植民地に渡ったか
グローバリゼーションの時代/蒸気船の発達
ヨーロッパ人はなぜ新世界に移住したか
イギリス国内で起こっていたこと/アメリカの台頭
●第13章 世界史のなかのヨーロッパ移民問題
帝国主義が決めた世界地図
ヨーロッパに押し寄せる難民
帝国主義諸国の思惑/火を噴いた「ヨーロッパの火薬庫」
ユーゴスラビア内戦の爪痕
コソボ難民は民族問題の縮図/シリアの難民問題
イラクとクウェートの場合
帝国主義の負の遺産