◆絨毯のご紹介
こちらの絨毯は、もっとも伝統的とされる**「シャー・アッバス・パターン」「イスリム・パターン」「アラベスク文様」**を巧みに組み合わせ、ペルシャ絨毯ならではの美意識を見事に表現した一枚です。クム産シルク特有の、しっとりとした艶と柔らかさを備え、どこかオールド感も漂わせながら、最上級クラスのペルシャ絨毯としての風格を感じさせます。
落ち着いた色合いと優雅なデザインは、日本の和室にもよく馴染み、これからペルシャ絨毯の世界に触れてみたい方にも、ぜひおすすめしたい一品です。
ここで、この絨毯に使われているそれぞれのパターンと文様について、少しご紹介いたします。
【シャー・アッバス・パターン】
このパターンの特徴は、「シャー・アッバスの花」とも呼ばれる「パルメット」**と呼ばれるモチーフが使われている点です。パルメットは単体でも、またイスリム・パターンと組み合わせても使用され、ペルシャ絨毯の代表的なデザインのひとつとして、長い歴史を持っています。
その名の由来については、一部でアッバス1世の治世時に初めて織られたとする説もありますが、実際には15世紀の細密画やサファヴィー朝初期の絨毯にもこのパターンが見られ、さらに古い歴史を持つことが分かっています。
パルメットのモチーフは、もともと蓮の花を表したもので、イスラム化以前のイランでは食器などにもよく描かれていたそうです。
【イスリム・パターン】
螺旋状の曲線文様で構成されたのがイスリム・パターンです。「イスリム」という名は「イスラム」に由来し、古くからペルシャ絨毯の重要なデザインとして親しまれてきました。
ヨーロッパでは「アラベスク」と呼ばれ、規則正しく絡み合う蔦のような曲線が特徴です。他の文様と組み合わせて使われることも多く、もとは建築物や碑文、写本装飾などにも用いられてきた伝統的な装飾文様のひとつです。
【アラベスク文様】
本来は「アラビア風の文様」という意味ですが、ペルシャ絨毯においては先端が二股に分かれた鋭い花のような形状の文様**を指します。その独特な形が龍の角に似ていることから、別名「ドラゴン・ヘッド」とも呼ばれます。
サファヴィー朝の時代には、この文様を主役にした絨毯も数多く作られ、19世紀末のビジャー絨毯にも同様のデザインが確認されています。20世紀に入ると、イスリム・パターンの先端装飾として、またボーダーや縁取りのデザインとしても多用されるようになりました。
また、左右対のアラベスクでパルメットを囲んだデザインは、その形が湯沸器に似ていることから、「サモワール」と呼ばれることもあります。
◆状態について
全体的に丁寧な手織り仕上げとなっており、経年による自然な風合いや若干のスレなどは見られますが、彩り豊かな色糸やシルクの美しい光沢はしっかりと保たれており、毛の擦れや毛立ちもほとんどなく、非常に良好な状態です。
さらに、ご購入後すぐに心地よくお使いいただけるよう、専門店にて丁寧なクリーニングを施して出品しております。末永くご愛用いただける絨毯として、自信を持っておすすめできる逸品です。