1. 【基本情報|Release Information】
-
フォーマット:LP(12inch)/Stereo(Binaural Recording)
-
タイトル:Adventure In Binaural|衝撃の実験 これがバイノーラルだ
-
レーベル:JVC(日本ビクター)
-
品番:VIBN-1
-
リリース年:1976年
-
製造国:日本
-
プレス仕様:白ラベル見本盤
-
録音:三鷹市民ホール/JVC青山スタジオ
-
収録:Victor Philharmonic Orchestra、Tokyo Philharmonic Orchestra ほか
音響知覚における「方向」と「距離」の概念が制度として導入された、日本におけるバイノーラル録音技術の先行的試作盤。
レコードという物理メディアを通じて、1970年代の音響研究者たちが「耳に再生される仮想空間」を構築しようとした、その実験的成果が刻まれている。
2. 【構造と文脈|Structure & Context】
音響構造と録音設計|Dummy Head as Acoustic Instrument
本作では、JVCが独自開発したダミーヘッド・マイクロフォン(実際の人頭に近い寸法・耳構造を再現した録音機材)が使用され、音響の定位・奥行・環境残響をそのまま記録。録音は16chアナログ機にて行われ、音楽は2ch、残り14chで空間の「環境音」を立体的に収録。最終的に2chにミックスダウンされることで、擬似3D音像としての再生が可能となる。
例として挙げられるトラック「時計屋の店先」では、時を刻むアンティーク時計が前後左右から響き、リスナーの頭部周辺に空間を構築する。これは、音楽ではなく「音が存在する空間」そのものをリスナーに渡す試みであり、録音=音楽という等式を軽やかに転倒させる。
技術的背景と制度的意図|Audio Technology as Ideological Apparatus
1976年当時、JVCはダミーヘッド録音に加え、スピーカー再生用の位相補正装置(バイノーラル→フォノラル変換プロセッサ)の開発も進めており、本作はその音響技術デモの役割も果たしていた。つまりこの盤は、単なる聴覚体験ではなく、録音技術制度の制度化に向けた政治的資料でもある。
このように『Adventure In Binaural』は、音楽レコードであると同時に、メディア工学と音響美学の交差点にあるプロトタイプなのである。
音楽の位置と非音楽性の台頭|From Concert to Sonic Event
クラシック演奏(ヴィクター・フィル/東フィル)は一種の素材として扱われ、むしろ環境音や空間ノイズのほうが強調される構成となっており、「楽曲」よりも「耳の向き」を変えることに主眼が置かれている。これは明らかに、「非音楽=制度を構成しない音」への着目が制度化された初期事例として捉えるべきである。
3. 【状態詳細|Condition Overview】
メディア:VG+
スリーブ:VG+
備考:白ラベル見本盤(プロモ用非売品)
4. 【支払と配送|Payment & Shipping】
発送:匿名配送(おてがる配送ゆうパック80サイズ)
支払:!かんたん決済(落札後5日以内)
注意事項:中古盤の特性上、経年変化・スレにご理解ある方のみご入札ください。完璧な状態をお求めの方はご遠慮ください。重大な破損を除き、ノークレーム・ノーリターンにてお願いいたします。
このレコードは、日本における擬似空間録音=バイノーラル技術の制度化初期に制作された一次資料であり、現代のASMR、VR音響、立体録音研究に直結する重要な先行例です。続編『Vol. 2』(VIBN-2)と並び、音響技術史と制度メディア史の交点にあるアーカイヴとして、研究者・音響美術家にも推奨される一枚です。