自己紹介欄にも記載していますが、猛暑のため、今月は新たな布を取り出すことができません。こちらも前月に整理した際、初めて出てきた布で、インドネシア染織の一級品であることを保証します。昔の蒐集品整理のため出品していますが、現在ではもう出会うことのできない布でしょう。サマーセールとして大変リーズナブルに出しますので、インドネシア染織のお好きな方に持っていただければと願っています。
　これは、インドネシア スマトラ島 パレンバンで製作された金糸浮織の「ソンケット」と呼ばれる布で、儀礼用の肩掛けとして着用されてきたものです。接写すると明るく写ってしまい銀糸に見えますが、1〜3枚目画像が、実際の色味に近い色です。
　大きさは約205㎝×76㎝で、19世紀末から20世紀初頭の古布であることを保証します。同手の布がオーストラリア国立博物館に所蔵（10枚目画像）されており、解説に19世紀とあります。こちらも、後述する絹糸の染料や浮織の緻密さから、19世紀末の布だ思いますが、厳しく見て「〜20世紀初頭」としておきます。
　金糸浮織ソンケットは、昔から評価の高い布でしたので、時代の下る写しもあり注意を要する布です。残念ながら手元に比較するものがありませんが、20世紀中頃から後半になり時代が下るにつれて、浮織の仕事が甘く単調になり、こちらの布のようにびっしりとした緻密さが見られなくなります。更に、中央部分の絹の色糸にも近年の染料が使われ出すことで分かります。
　出品の布は、絹地に金糸を用いて精緻な浮織がびっしりと織り込まれています。
　まず、上下の両端部分（4枚目画像）は、幾何学文様の浮織がなされており、アップ（5枚目画像）で見ても隙間の無いほどの密度で、仕事に甘さが見られません。端の部分に至るまで全く手抜きないことが分かります。
　一方、中央部分は、幾何学模様と花文様（6枚目画像）の浮織がなされています。花弁部分に使われている絹の色糸は、天然染料で染められたもので、時代の下るものではありません。7枚目のアップ画像を見ると、織り込まれた文様は単調ではなく、変化に富んでおり、実に上手だと思います。金糸でこれだけ緻密な刺繍状の浮織を施すのは、恐るべき手間と費用がかかったことでしょう。
　状態ですが、これまでコレクションしていた同手の布の中でも、最も良い状態です。かつて所有していた同手の布には、少なからず補修がありましたが、この布は補修箇所がありません。ただ、手前の左下に破れ（9枚目画像黄色囲み）と右上にも破れ（10枚目画像水色囲み）があります。傷みが目立つように広げて撮影したので分かりますが、どこが破れているか分からないレベルです。あと、9、10枚目の白く囲んだ部分の金糸に傷みが見られます。その他に、金糸のほつれや折り目にやや傷みの見られる箇所があります。全体画像や2、3枚目の2分割画像でご確認の上、傷みや汚れも時代を経て大切にされてきた布の証と捉え、古布にご理解のある方のみ、ご入札をお願いいたします。
　オリジナルの金糸ソンケットは大変貴重で、なかなか無く、お好きな方に喜んでいただける良い布が出てきたと思います。時代や希少さを保証しますので、インドネシアの古布にご理解があり、大切に引き継いでくださる方がいらっしゃいましたら、よろしくお願いいたします。

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（2025年 8月 3日 20時 00分 追加）
　出品時、説明文中に記載し忘れましたが、こちらのソンケットにも、10枚目参考画像のオーストラリア国立博物館所蔵の布と同じく、上下両端部分と中央部分の境目（4枚目画像上部）に、鳥文様が織り込まれており、レアな一枚です。