
サンヨーSF-58
サンヨーの家形ラジオと言えば、トランス式のSS-58を指すことが一般的です。
6.3V管と5M-K9のオーソドックスな管球構成の中波専用機で、電源部はオートトランスが使用されていました。
現在入手できる画像や、レストア記事はこのモデルに限られていることから、家形と言えばSS-58で当然です。
そう言いながらも、今回の出品で皆様には、もう一つの家形、SF-58の存在を目にして頂こうと思う次第です。
いくつかの考察も含めて、皆様には本機の価値を良くご検討頂けますと幸いです。
興味深い幾つかの出典があります。
SS-58の2つの新聞広告(1954,昭和29年)と、洋友兵庫 編纂の年表資料です。
広告の一つは、三洋婦人にして「テレビ受像機に使われるミニアチュア管を、ラジオに用いるので低雑音、高性能」と言わしめているもの。
広告の二つ目は、「海を渡るラジオ」のキャッチコピーで、MT管とスチロール樹脂によって高性能、低価格が実現できたこと、
それによって、北米市場への進出が出来たことを告げています。
洋友兵庫では、サンヨーにとって、エポックメイキングとなった製品を年代別の一覧表に作成していますが、
1954年は、SS-58をもって対米輸出 三洋一号機としてピックアップしています。
さて、ヴィンテージラジオに詳しい方なら、ここで腑に落ちない点が出てきます。
純国産整流管の5M-K9を使ったセットを、そのまま北米市場に持ち込むことなど不可能ではないか。
まさにこの一点に尽きると思います。
そこで北米向けには、12V系のトランスレスに組み替えて、短波を急造したモデルをあてがって、「SF-58」として
扱ったのではないか。
国内ではマーケティングの都合上、SS-58のみで通して、輸出モデルの国内還流を制限していたであろう。
しかし、オートトランス機など、所詮トランスレスまでの過渡期の存在に過ぎず、
当時の矢継ぎ早に発売された新モデルにSS-58もまた埋没していったのではないか。
ともあれ、世界戦略製品としてサンヨー社史にその名を刻むモデルであったのは本機SFのほう。
以上が考察になります。
このSF-58、かなりレアです。ネット検索しても出てくるのは、アマゾン、にせよ当出品物のレストア前の姿を写したものが殆ど。
あまりの現物の無さに驚かされます。
この機会に入手してみてはいかがでしょうか。
ラジオ性能は素晴らしく、
当工房のある兵庫県山間部にて、昼間13時台、四国放送を難なく受信しています。
あなたの地域で聴いてみてください。