鬱蒼とした森の中での『ドン・ジョヴァンニ』
グート演出、ド・ビリー指揮の冴えるザルツブルク音楽祭でのウィーン版上演
モーツァルト:
歌劇『ドン・ジョヴァンニ』全曲(ウィーン版)
クリストファー・マルトマン
アーウィン・シュロット
アンネッテ・ダッシュ
ドロテア・レッシュマン
アナトーリ・コチェルガ、ほか
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
ベルトラン・ド・ビリー(指揮)
演出:クラウス・グート
クラウス・グートによるザルツブルク音楽祭でのダ・ポンテ三部作の第2弾となった『ドン・ジョヴァンニ』、Blu-Rayでも発売です。
舞台は鬱蒼とした暗い森の中。
通常かっこいい誘惑者に描かれるドン・ジョヴァンニは、冒頭の騎士長との戦いで銃弾を受けて大怪我をし、終始苦しんでいます。
一方、ドンナ・アンナはドン・ジョヴァンニと密通しているものの、それをドン・オッターヴィオに嘘までついて隠そうとする人物。
ゼルリーナは小悪魔を通り越して魔性の女で、ウィーン版特有のレポレッロを縛り上げる二重唱ではいたぶって楽しんでいる様子も。
グートは森という野生の中で、登場人物の理性の内側にある本性を開けようとしているようです。
なお地獄落ちで幕切れです。
ドン・ジョヴァンニは、英国のバリトン、マルトマン。
常に痛みに苦しんでいるという個性的なタイトルロールを印象的に演じています。
レポレッロはウルグアイ出身のイケ面バス、シュロット。チンピラ風のレポレッロがピッタリ。
さらにドイツの人気ソプラノ、ダッシュのドンナ・アンナ、メトでも活躍する米国のテノール、ポレンザーニのドン・オッターヴィオ、
モーツァルト・ソプラノとして大人気のレッシュマンのドンナ・エルヴィーラ、ロシア出身でロンドンでの『リゴレット』のジルダが大成功を収めたシューリナのゼルリーナ、
グート演出の『フィガロの結婚』来日公演でフィガロを歌ったエスポジトのマゼット、そしてバスの重鎮、コチェルガの騎士長と現代の最高水準の面々。
ド・ビリーがウィーン・フィルを生き生きと鳴らし、音楽面でも極めて充実した上演です。(キングインターナショナル)