龍進斉こと故・堤朋一氏の二寸鉋で同じ二寸でもワイドサイズの80㎜あります。
厚手の鋼付けの裏金(共裏)がセットです。
完全未使用品です。
とはいえ少し茶色っぽい部分もあるのですが、男盛りも含めこの外観の鉋は茶色っぽい部分が出る事が多々ありますが、ニスのような物がコーティングされてますので、通常は未使用でまともに保管している状態ではあまり錆が出ることは無いのですが、薬品的な物で仕上げ処理しているので、恐らくその段階で洗浄など多少の錆が出がちで、その上からコーティングしているので新品時からほぼ進行はしていないが、恐らくは新品でも部分的に薄ら茶色くなりがちなのではないかと思います。
当時、祖父が堤鉋製作所と直接やりとりをして別打ちで注文していた鉋で、銘も鍛冶名を冠した『龍進斉』。
40年以上前の物になると思います。
その年代だとほぼほぼ堤朋一さんの代表的な鉋の『男盛』の銘の鉋ばかり造っていたのではないでしょうか。
その為に段取り的都合で『男盛り』風の処理しか対応出来なかったのか銘以外の外観は男盛りそのものです。
銘が『龍進斉』という鉋も元々は刻印の美しく丁寧な磨き仕上げの鉋があり、それがかなり優秀だったのか、この鉋が『龍進斉』銘なのはそれと同じ内容の鉋をリクエストしたという事だと思われます。
その刻印の鉋も今回出品しており、同じくラスト一枚です。
二種類とも揃えるというのも共に同サイズですし、「通」な方なら二種類並べて昔を思い描くのも悪くないですよね。
」
堤朋一氏にいろいろなサイズを注文し、何年もうちでは何度もおろしてはメインで使っていたようですが、これが未使用ラストです。
ラストというだけあって、造形的にも一番整った物を手元に残しておりました。
以前亡くなった父が切り銘の『男盛』の話題がが出た時、「男盛りも、まぁいい鉋やけどな・・・」というような事を言っていました。
ニュアンス的にその後に続く言葉は「龍進斉とは物が違う」と言いたかったのでしょう。
いつも削り仕事をさせられていたうちの職人は、ほぼ『男盛り』ばかりを買いつないでいましたが、ある日一枚だけうちの父から『龍進斉』をお裾分けしてもらったそうで、「よく切れる。全然違う。吸い付くように切れる。」と後年話していました。
勿論、特別な思いを持って台に仕込んだので、余計によく切れるという心理的作用もあったのではないかという疑いも拭えませんが、今までハズレを引いたという事もうちで聞いた事は無いです。
私も最初に中古で貰い、その後更に二枚ぐらい使い潰しましたが、鉋が何たるかについて分からないうちから使い、後年別の作者の鉋を道具屋で買って使ってみて初めて『龍進斉』がよく切れる鉋だったんだなと実感した思い出があります。