国内盤でのリリースということで、おそらく実質的なリーダーは小林裕(1955年生まれ)なのだろう。私としては初めて聞く名のピアニストなのだが、彼のサイトのバイオを見ると、今まで接点がなかったというのもなんとなく分かるような気がする 本作のメンバーがどういう経緯でこういう人選になったのか、エディ・ゴメスにビリー・ドラモンド、さらにはゲストとして
アル・ディメオラまでが3曲に参加しているとはなんとも豪華だよね。実はそれにつられて買っているのだが、特にディメオラ
に関しては今までずっと本格的な4ビートジャズは避けてきた(もしかすると嫌いなのかも)だけに、本作での演奏には非常
に興味深いものがある。近年のリーダー作はとにかく肌に合わなくて、例えば2005年にリリースされた「Al Di Meora & Leoni
d Agutin/Cosmopolitan Life(別頁あり)」なんかも単なるAOR路線で最悪だったけど、今年はチック・コリアの第二期RTFの
再結成ツアーもあるようだし、ここにきてようやく私の望んでいる路線に戻ってきてくれたって感じだね。
小林のオリジナルが3曲と、チックの「Captain Marvel」、ショーターの「Nefertiti」、スタンダード等で全9曲。
まずはアップテンポの「朝日のようにさわやかに」からスタートするのだが、この曲での聴きどころはなんといってもディメ
オラでしょうな。とはいえやはり4ビートジャズはあまり得意でないような感じだけどね。それでも彼がストレートなギター
の音色で、ジャズメンに交じって純粋な4ビートをやっているのを聴くのは初めての体験なので、もうそれだけでもウハウハ状
態になっている。アドリブの途中にコードを挟み込むことなく(挟めない?)単音で弾いているので、雰囲気としてはパット
・マルティーノを連想するね。
ディメオラが気になるので他の2曲も最初に聴いてしまうけど、4曲目の「Captain Marvel」は曲調がら彼のギターがバッチリ
と嵌っていて、チョーキングや速弾きを駆使した彼本来のスタイルを堪能できる。9曲目はアコギに持ち替えての小林とのデ
ュオ。叙情的ないかにもお涙頂戴といった感じの曲調が、個人的には好きになれない。
非4ビートが主体のピアノトリオの演奏の1曲ごとの感想は省略するが、小林はいかにも日本人的なピアノを弾く人といった
印象。リズムがちょっと甘いかな。テクニックでガンガン攻めてくるようなタイプではないので、なんとなく女性っぽさを感じ
てしまうのだが、それには彼のオリジナル曲も含めた選曲的なものも大きく関係しているのかも知れない。ゴメスとドラモン
ドはどの曲も好演奏。バッキングにしてもソロにしても実に素晴らしいですなぁ。この二人のおかげで演奏がとても有機的な
ものとなっている。またゴメスに関してはベースの音質も良好で、例のいやらしい音で録れていないのがなによりもいいね。
ドラムスにしても、ドラモンドが意図しているような繊細感のある音で録れていて、どうしてこんなに良い音なんだろうとク
レジットをよく見たら、エンジニアは日本人で一番好きな内藤克彦だったです
| 1 | SOFTLY AS IN A MORINIG SUNRISE 朝日のように爽やかに |
| 2 | MISSING MOMENTS ミッシング・モーメンツ |
| 3 | BEAUTIFUL LOVE ビューティフル・ラヴ |
| 4 | CAPTAIN MARVEL キャプテン・マーヴェル |
| 5 | NEFERTITI ネフェルティティ |
| 6 | CROSSING MEMORIES クロッシング・メモリーズ |
| 7 | I'LL CLOSE MY EYES アイル・クローズ・マイ・アイズ |
| 8 | SUNDRY WALTZ NO.9 サンドリー・ワルツ No.9 |
| 9 | CHIQUILIN DE BACHIN チクリン・デ・バチン |