★内容: 社会のあり様や働き人の暮らし、家族の営みや自然の移り変わりを、日々を生きる者の飾らない眼差しでとらえ、深く柔らかくそしてユーモラスに練り上げた言葉でうたう詩人・吉野弘。名詩「I was born」や「祝婚歌」など、やさしく誠実な者たちの魂の重力を探った戦後五十年にわたる詩群のなかから代表作品を選び、季節・生活・言葉遊びなどテーマごとに配置する。
★著者、吉野 弘は1926(大正15)年、山形県酒田市生まれ。山形県酒田市立酒田商業学校を戦時繰り上げ卒業。若いころ高村光太郎の「道程」を読んで感銘を受ける。1943年帝国石油に入社。戦後労働組合運動に従事するが過労でたおれ、療養中に詩作を始める。1952年に詩誌「詩学」に投稿、翌年に川崎洋や茨木のり子の詩誌「櫂」に同人として参加。ここで谷川俊太郎、大岡信らと親睦を深める。1957年に第1詩集『消息』を発表、やさしい日常的表現のなかに残酷な真実を明確にとらえ、次いで『幻・方法』を上梓。1972年『感傷旅行』で読売文学賞、1990年『自然渋滞』で詩歌文学館賞を受賞。1994年『吉野弘全詩集』を刊行。代表作には広く知られる「祝婚歌」をはじめ、国語教科書に掲載された「夕焼け」、「I was born」、「虹の足」などがある。作風としては独特の転回視座を有しているのが特徴である。また詩の魅力や詩作法・技術論から詩的感動の原点とは何かという問題にまで論を進めた評論『現代詩入門』が著名。2014年死去(享年87)。