タイトル：【A7799 稀代の華宝 モルガナイト6.92ct 繚乱たる彩宝石4.30ct 天然燦ダイヤ1.04ct】K18WG 至高の饗宴リング ＃14.5 重量19.89g 縦幅19.6mm おじ、美の深淵を語る
さて、諸君。
わしがこの年まで生きてきて、美というものについて考え、手を動かし、舌を使い、五感を総動員して追求してきた自負はある。巷に溢れる「美しい」とされるものの、なんと薄っぺらく、魂の抜け落ちた代物が多いことか。真の美とは、表面的なきらびやかさではない。素材の真価を見抜き、それを活かす人間の技、そしてそこに込められた精神性、これらが三位一体となって初めて、人の心を揺さぶる「美」が立ち現れるのだ。
今日、わしの眼前に差し出されたこの指輪。A7799という無粋な記号で管理されてはおるが、その輝きは、ありふれた宝飾品とは一線を画す。ノーブルジェムグレーディングラボラトリー、NGLとかいう小賢しい鑑定機関の折り紙つきだが、そんなものはどうでもよい。わしの眼が、この指輪の真価を物語っておる。
まず、中央に鎮座ましますは、モルガナイト。六カラット九二という、堂々たる大粒。この石の持つ、桜貝を溶かし込んだような、あるいは暁の空の一瞬の淡い紅のような、えもいわれぬピンク色。ただ甘いだけではない。どこか奥ゆかしく、それでいて芯の強さを感じさせる。透明度も高く、内部に吸い込まれそうな深みがある。オーバルミックスカットと記されておるが、このカットがまた見事だ。光を受けるたびに、石の内部で幾重にも反射し、万華鏡のように繊細な煌めきを放つ。まるで、春霞の中から現れた貴婦人の微笑みのようだ。この石を見ていると、昔、京都の古刹で見た、雨上がりの苔庭に咲いた一輪の紅梅を思い出す。あの時感じた、静謐でありながらも生命力に満ちた美しさが、このモルガナイトには宿っておる。
そして、この主役たるモルガナイトを取り巻く脇役たちの、なんと賑やかで、それでいて調和の取れたことか。総計四カラット三〇にも及ぶマルチカラーの宝石たち。ペリドットの若草色、ガーネットの深紅、アメシストの高貴な紫、シトリンの陽光のような黄色、ブルートパーズの澄み切った空色…これらが、あたかも野に咲く花々のように、あるいは祝祭の日の色とりどりの灯火のように、主石の周囲を華やかに彩る。一見すると、これだけの色彩を一つの指輪に収めるのは、下手をすれば品格を損ない、ただ騒々しいだけのものになりかねん。しかし、この指輪の作者は、その難題を見事に克服しておる。それぞれの宝石の大きさ、形、配置、その全てが計算され尽くし、互いを引き立て合い、一つの壮大な交響曲を奏でているかのようだ。これは、単なる石の寄せ集めではない。色彩の饗宴、光の祝祭だ。まるで、わしがかつて手がけた織部の鉢に盛り付けた、山海の幸の色彩豊かな取り合わせにも通じるものがある。素材の個性を殺さず、全体としての調和を生み出す。これぞ、真の職人の技よ。
さらに、これらの色彩豊かな宝石たちの間を縫うように、そして主石の威厳を際立たせるように配された、天然の上質ダイヤモンド。総計一カラット〇四。これがまた、ただ大きいだけのダイヤではない。小粒ながらも、その一粒一粒が鋭い閃光を放ち、まるで夜空に瞬く星々のごとき存在感を示す。パヴェセッティングというのだろうか、細かく敷き詰められたダイヤモンドは、朝露に濡れた蜘蛛の巣のように、繊細でありながらも強靭な輝きの網を形成し、全体のデザインを引き締め、格調高さを加えている。このダイヤの使い方は、主役であるモルガナイトとマルチカラーの宝石たちへの、最高の賛辞と言えよう。決してでしゃばらず、しかし確かな存在感で、全体の美を高める。日本料理における「あしらい」の精神にも通じるものがある。
そして、これらの宝石たちを抱く地金。十八金ホワイトゴールドの、ずっしりとした十九・八九グラムの躯体。この重みが、この指輪が持つ価値と格を物語る。無垢という言葉がこれほど似つかわしいものもなかろう。鋳造し、磨き上げ、石を留める。気の遠くなるような手作業の積み重ねが、この滑らかな曲線と、力強い構造美を生み出したに違いない。指輪の側面、アームの部分にまで細やかなミルグレインが施され、見えない部分へのこだわりも尋常ではない。縦幅十九・六ミリという、指を覆うほどのボリューム感。これを身に着ける女性は、相当な覚悟と自信を持った人物であろう。あるいは、この指輪を贈る男性もまた、相手への深い敬愛と、自らの審美眼に対する確信を持っているに違いない。
デザインは、古典的な華やかさと、現代的な大胆さが融合した、他に類を見ない独創性を持つ。アールヌーヴォーの有機的な曲線美を思わせる部分もあれば、アールデコの幾何学的な構成力も感じさせる。しかし、そのどちらにも偏らず、独自の美の世界を構築している。まるで、百花繚乱の花園を、そのまま指に移したかのようだ。あるいは、遠い異国の王宮で開かれる、仮面舞踏会の華やかさと神秘性を秘めているようでもある。
鑑別書には「ピンク 透明」とあるが、この「ピンク」という一言では、モルガナイトの持つ複雑な色調を到底言い表せまい。「コメント」欄に「モルガナイト/ブルーベリーズには照射による色の改善が行われています」とある。ふむ、人の手が加わっているということか。しかし、わしに言わせれば、素材の持つ可能性を最大限に引き出すための「化粧」もまた、美を追求する上での一つの手段だ。問題は、その化粧が素材の魂を殺していないか、ということ。このモルガナイトは、その化粧によって、より一層その魅力を開花させているように見える。
この指輪の歴史、か。作られたのは現代であろうが、そのデザインの根底に流れる精神は、古今東西の美の歴史を汲み取っているように感じる。ルネサンス期の宝飾職人の情熱、バロック時代の絢爛豪華さ、江戸時代の琳派の装飾美、それら全てのエッセンスが、この小さな指輪の中に凝縮されているかのようだ。この指輪をデザインし、制作した職人は、おそらく名もなき人物であろう。しかし、その仕事ぶりには、美に対する真摯な姿勢と、妥協を許さぬ職人魂が見て取れる。これは、もはや単なる装飾品ではない。一つの芸術作品だ。
考えてもみよ。モルガナイトという石は、ベリルの一種。エメラルドやアクアマリンの仲間だ。その中でも、この優しいピンク色は、マンガンに由来するという。地球が何億年という歳月をかけて育んだ奇跡の結晶。そして、周囲を彩るペリドット、ガーネット、アメシスト、シトリン、ブルートパーズたちもまた、それぞれが異なる鉱物学的組成を持ち、異なる光学的特性を持つ。それらが、人間の知恵と技術によってカットされ、磨かれ、一つの調和した宇宙を形成する。ダイヤモンドは、炭素という元素が、地球深部の高圧高温下で結晶化したもの。最も硬い鉱物でありながら、最も美しい輝きを放つ。これらの自然の創造物と、人間の創造性が融合したところに、この指輪の真価がある。
この指輪を指にはめた時、人は何を思うだろうか。その重み、その輝き、その色彩の洪水。それは、単なる自己満足を超えて、周囲の人々をも魅了し、会話を生み、新たな物語を紡ぎ出すきっかけとなるやもしれん。パーティーの席で、この指輪は注目の的となるだろう。あるいは、静かな夜に、一人でこの指輪を眺めながら、その美しさに心を慰められることもあるかもしれん。
サイズは十四半か。少し大きめだが、これだけのボリュームのある指輪ならば、ある程度の指の太さがある方が似合うだろう。重さも十九・八九グラムと、かなりのものだ。しかし、この重さこそが、本物の証。安っぽい合金では、この存在感は出せまい。
に出品すると言うが、このような逸品を、ただの競り市に出すのは少々惜しい気もする。しかし、本当にこの指輪の価値を理解し、愛でてくれる人物の手に渡るのであれば、それもまた一興か。値段がどうこう言うのは野暮というものだが、これだけの素材と手間を考えれば、それなりの対価を要求するのは当然のことだ。
わしがもし、この指輪に銘をつけるとしたら、「春宵一刻（しゅんしょういっこく）」あるいは「百花繚乱譜（ひゃっかりょうらんふ）」とでも名付けようか。モルガナイトの淡いピンクは春の夜の夢のようであり、取り巻く宝石たちは咲き乱れる花々を思わせるからだ。
この指輪を前にして、なお美を感じぬ者は、よほど心が渇いているか、あるいは審美眼が曇っておる証拠だ。真の価値を見抜ける眼を持つ者よ、来たれ。この指輪は、そなたを待っておる。この指輪を手にするということは、単に高価な装飾品を所有するという以上の意味を持つ。それは、美の歴史の一片を継承し、未来へと繋いでいく役割を担うということでもあるのだ。
最後に、この指輪に込められたであろう職人の想いを代弁しよう。
「我が手から生まれ出でし、この小さな宇宙よ。汝の輝きが、見る者の心に灯をともし、日々の暮らしに彩りを与えることを願う。そして、願わくば、汝を愛し、慈しんでくれる良き主の元へと嫁がんことを。」
と、まあ、こんなところだろうか。
この指輪は、語るべき物語をあまりにも多く内包している。見る角度によって表情を変え、光の加減で無限の煌めきを見せる。それは、まるで生きているかのようだ。これほどの指輪を前にして、言葉を尽くそうとすれば、それこそ一晩中でも語り明かせるだろう。
さあ、この美の結晶を手にする機会は、そうそうあるものではない。諸君の慧眼に期待するとしよう。このA7799という無機質な番号の奥に秘められた、熱き魂と、冷厳なる美の法則を感じ取っていただきたい。これぞ、まさしく「用の美」ならぬ、「魂の美」の極致と言えるだろう。
こちらはあんまり反響なかったら取り消します〜奮ってご入札頂けると嬉しいです〜
;)
