2005年1刷。ビニカバに少傷。本文美
動物の写真だけでなく、漁や製塩などの活動、地形、集落なども収録、水辺の写真も多くあります。
メディア掲載レビューほか
驚異の大地アフリカ 空から眺めた地球の素顔
ヘリコプターに乗って上空から撮影、斬新な視点でアフリカを捉えた。
貧困や病気、動物といったありきたりなイメージと構図を超えるのが狙い。
日本から遠い大陸が、ぐっと身近に魅力的に見えてくる。(聞き手は酒井 耕一)
大陸の美と威厳を撮る
──ピンクのフラミンゴの大群や、オレンジが山盛りになった青空市場など上空から見たアフリカの表情は美しさに溢れています(ページ数は合計207)。
撮影に当たっては2つのテーマが心にありました。1つは果物市場をはじめとする具体的な対象を写すこと。もう1つは砂漠や空といった抽象的なテーマを追うことです。そうやって幅広いイメージを捉えると、いろいろなアフリカが伝えられると考えたのです。
空から撮ることは挑戦でした。人は歩けても空は飛べません。空から動物や住宅、火山、海などを捉えたら新しい風景が見えると思ったのです。実際に空に昇ってみると、予期しなかった素晴らしい風景が溢れていて、威厳もありました。予想以上にいい写真が多く撮れました。
アフリカと言えば、貧困や病気、あるいは自然といったありきたりのイメージから脱しきれません。私はそのステレオタイプ(画一的な印象)を超えたかった。日本について外国人が「東京と高層ビル」と言うのはよくある話です。しかし日本には違う表情がたくさんある。私はそれをアフリカで表現したかったのです。
――米国人のハースさんが、アフリカを訪問するのは時間に限りがある。しかも揺れるヘリコプターや軽飛行機の中で、シャッターチャンスを得るのは準備と集中を要しますね。
いい写真を撮るにはまず心のあり方を変えなくてはなりません。ヘリが揺れたり、プロペラの音で集中力が切れたりして、いい風景を見逃すのは残念なことです。しかも目の前には様々な風景が広がっています。何より集中をして、レンズの先に映る孤独な牛や目の前の太陽といった自分の心に響くものを選んで撮るのが大切です。
もう1つ、撮影の準備も念入りにしなくてはなりません。私は今回、タンザニアやナミビア、ケニアなどを訪れましたが、どこも事前に撮影計画を説明して、きちんと航空撮影許可を得なくてはなりません。
しかし、2001年9月11日の米テロ事件の後は、許可を取るのが難しくなっているのです。残念ながら許可を得られない国もあります。念入りに準備をするのですが、それでも天気が悪ければ中止になります。完成には何度も旅をしなくてはなりません。
――もともとは写真家ではなくて、投資会社で企業買収と再生支援を手がけています。
投資ファンドは今ではとても巨大で有名な存在ですが、私は20年前にその事業を始めた先駆けです。
セブンアップやドクタペッパーという飲料水会社の買収と再建を手がけました。企業再建の仕事にとって大切なのは、投資先の株の売却についての計画をきちんと練ることです。投資から何年後に誰に売るか、または上場させるのかなどを考えておくのです。
そんな仕事を続けるうちに、お金とは関係のない芸術性のある職業に引かれて写真家になりました。まず自分の中でバランスがうまく取れます。米国とアフリカの双方に関わることで、世界の奥深さを伝えていきたいです。
――次の撮影も始めていますね。
中南米への旅を繰り返しています。既にブラジルやペルーなどに足を運びました。ペルーのマチュピチュ遺跡は素晴らしいものでした。中南米の多様性を描きたいです。素晴らしい写真で、人々の想像力を高めることは、心を豊かにすると信じていますので。
ロバート・B・ハース(Robert B. Haas)氏
1969年にエール大学卒業。72年にハーバード大学法律大学院で博士号を取得。企業投資会社(米テキサス州)の共同創業者でもある。
(日経ビジネス 2005/12/12 Copyright2001 日経BP企画..All rights reserved.)
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