Max Sievert Campus 3 ストーブの前期型です。前期型ですので製造は1930年代でしょう。Max Sievert社では1950年代にスベア123を世に送り出しますが、戦前にはこれよりさらに小型で魅力的なストーブを生産していました。Campus 3 は後期型の方が後のスベア123にデザインはより近づきますが、前期型の鉄製風防も堅固でより信頼感もあり、コレクター垂涎のストーブです。
私はケロシンストーブコレクターなので、基本的にガソリンストーブは収集しませんが、このCampus 3だけは別です。タンク直径80ミリ、本体高さ150ミリという掌に楽々と収まるスリムなボディーは、超小型ガソリンストーブとして唯一無二の存在です。一度手に取れば、まるで懐中時計をいじるような感覚を所有者に与えてくれます。スベア123同様、点火後最初はボッ、ボッという音からジェット機のような豪快な嗜好音に変化していくのも最大の楽しみだと思います。
今回、ほとんどの方が知らないと思うので、ソースパンの無い状態での重さを量りました(家庭用秤ですので誤差はお許しください)。写真3枚目をご覧ください。本体と必要最低限のパーツで、380グラムを切るのはガスストーブ(カートリッジ含む)と比較しても極端に重くはないと思います。縦走で連泊でもCampus 3を事前に燃料満タンにし、必要なガソリンを小型ボトルで携行すれば総重量も抑えられます。スベア123Rのようなクリーニングニードル機構が無いのも、逆に信頼性の向上に繋がり、予熱も短時間で済みます。燃焼後に掃除針を手で上下させればいいだけです。前期型でも燃料キャップは数種類ありますが、出品物は個人的に最も信頼性が高いものだと思っています。キャップ頭に切れ込みがあるのとスパナが掛けられる構造ですので、整備が格段に楽になります。出品物は給油口パッキンだけでなく、安全弁内部の小さなパッキン(PIP)も変えているので燃焼だけでなく、不意な安全弁開放を防いでくれます。
鉄製の風防は錆による減りはほとんどありません。これってかなり重要です。メッキの剥がれはソースパンの脱着の際に出来た部分が大半であり、独特の焼き跡が時間の経過を感じさせます。後期型に比べ、前面の開口部が大きいですが、これがまた必要以上に輻射熱によるタンクの過加圧を防ぎます。30年以上Campus 3を使っていますが、スベア123Rのようにタンクの温度上昇による熱暴走や安全弁が開いたりしたことは真夏でも私は一度も経験しておりません。かといって燃焼が弱いかというとそんなことは決してなく、適度な輻射熱をタンクに与えてくれます。この絶妙なバランスが前期型の最大の特長であり、ディープコレクターが何より憧れる点だと思います。
タンクはへこみがいくつかあります。一番大きなものは写真8枚目です。えくぼ程度の大きさですが、あまりにもタンクが小さいので目立つといえば目立ちます。メッキはタンク裏に一部剥がれがありますが、サイドは比較的よく残っており、傷が中心となります。ただでさえ市場に出回る数が少ない中で、タンクが無傷のものを探して入手するのは極めて困難だと思います。特にここ5~6年は整備されていないどころか点火確認さえしてないものが驚くほど高額で取引されています。出品物は整備品ですので安心してご入札ください。また出品物はタンクの裏の3本の脚もぐらつき等無く、正常に動きます。この折り畳み脚により径が小さなタンクでも驚くほど設置が安定します。ストーブの命というべきバーナーは写真でもわかると思いますがとても綺麗な状態です。どんなにタンクが綺麗でもこのバーナーの状態が悪ければストーブとしての価値は半減(いやほとんど無くなって)してしまうでしょう。バーナーのスペアなんてCampus 3ではほぼ入手が不可能ですから、生産時のバーナーのコンディションは何物にも代えがたいです。またスピンドルの動きもなんら問題ありません。時計回りに回せば、きちんと燃料をシャットオフしてくれます。
付属するソースパンは多くのへこみと残念ながら一ケ所針で刺したような貫通穴(下から45ミリ程のサイドに)があるので、このままでは入れた水が漏れます。穴は1ミリ以下ですので、溶接会社に持ち込んで埋めてもらってもいいかもしれません。私は通常、タンクの直径より僅かに大きいチタン製マグカップの中に入れて携行するので、このタンクを覆えない(保護出来ない)純正ソースパンはほとんど出番がありません。アルファ米やフリーズドライが全盛の今、容量の多いソースパンは私だけでなく多くの方に必要ないかもしれません。
ご購入後、色々と悩みながら最適のコッヘルを見つけてください。スピンドルキーは、MADE IN SWEDENと入っていますが、純正ではありません。良く出来た社外品ですが、サイズはぴったり合います。
写真の10枚目でプリムスのガスストーブP-115(+IP-110缶)との大きさ比較しています。Campus 3のタンクの小ささがより一層際立ちます。タテ型のクッカーが全盛の今、90年も前にこんなに小さなタテ型ガソリンストーブを開発したMax Sievertのアイデアと技術力には驚嘆しかありません。スリムなCampus 3をそっとザックの隙間に仕舞う時、横型収納缶に入ったストーブには無い幸福な気持ちに包まれるのは私だけではないでしょう。
1934年カタログのコピー(Campus 3の該当部分)をお付けします。パーツ構成もわかるので何かと役に立つでしょう。
あと本体のケースを代用で探すならば、一眼レフ用のレンズケースはお薦めです。ぴったりのサイズを比較的楽に探せると思います。
なお写真の10枚目にあるプリムスガスストーブとカートリッジは大きさ比較で出しただけなので、付属しておりません。
ディープコレクターのご入札お待ちしております。
(2025年 9月 9日 19時 48分 追加)3枚目写真の秤は付属しません。お間違えないようよろしくお願いいたします。