朝日新聞社
1992年
186ページ
ハードカバー
作品写真図版フルカラー
30.5x22.5x1.8cm
※絶版
観世流宗家に伝わる最高峰の能面40点や能装束類70点、
世阿弥自筆の能楽論書「花習内抜書」や書状など文献資料31点を展観した展覧会の図録。
カラー写真図版、論考テキスト、各品の詳細解説を収載。
能面は裏面のモノクロ写真、寸法、製作年と詳細解説。
能面は鎌倉時代、室町時代、江戸時代、昭和時代の名作を収録。
重要文化財、重要美術品など、大変貴重な作品を惜しみなく公開した貴重な資料集。
【ごあいさつ より】
六百年余にわたる能楽の歴史を象徴する旧家観世宗家に伝わった能面や能装束を一堂に集めた展覧会「観世宗家-幽玄の華」を開催いたします。
能楽は、観阿弥清次・世阿弥元清父子により、戦乱の南北朝時代から室町時代初期にかけて大成されたと言われています。今日までその中心にあるのが始祖の流れを引く観世大夫家(観世宗家)です。六世紀にわたる風雪のなかで、常に能楽社会を代表してきた旧家だけに、日本の宝とも言える貴重な資料が数多く所蔵されてきました。
本展は、同家伝来の能楽資料の保存・活用を主目的に平成三年二月に設立された財団法人観世文庫の発足を記念して開くもので、観世宗家から同文庫に寄贈された世阿弥自筆の能楽論書をはじめ、重要文化財を含む多数の能面、染織美術の粋を集めた新旧の能装束など、えりすぐりの逸品ばかり百四十余点を展観いたします。日本芸術史上、比類なき到達点を示すこれら「幽玄の華」を、こころゆくまでご鑑賞ください。
本展開催にあたり、貴重な所蔵品を快く出品していただき、あらゆる面でご協力を賜りました観世宗家二十六世観世清和氏、財団法人観世文庫、ならびに関係者方の方々に、厚く御礼申し上げます。
【目次より】
ごあいさつ 朝日新聞社
ごあいさつ 観世清和
記念展の開催を祝す 犬丸直
三代がかりの観世文庫 小西甚一
生きている国宝 西山松之助
カラー図版
能面
能装束
帯・中啓
文献資料
解説
能は幽玄である 松岡心平
流儀を支える観世「家」の人たち 山崎有一郎
能と能面 中村保雄
観世宗家の能装束 山邊知行
観世大夫家伝来の文献資料について 表章
観世大夫家略系譜
列品解説
●能面
”能は能面の選択から始まる”といわれるほど、能面は能にとってもっとも大切な要素である。観世宗家には、国指定の「重要文化財」や「重要美術品」の能面が多い。そのうえ、徳川幕府の式楽(儀式音楽)となった江戸初期
には、当時の大夫は能面制作で。”天下一”の称号を受けていた河内家重にそれらの多くを写させている。以後代々の大夫たちは能面について特に気をつかい、昭和の時代に入ってからも当代の第一人者であった入江美法に製作させていて、常にその充実をはかってきた。今回の展示はそうした観世家所蔵能面の歴史を知るにもっともふさわしい展覧会になっている。
●能装束
能の美を代表するのが装束である。時に絢爛豪華、時に簡素端麗な装束が、曲柄や演者の意図によってそのつど選ばれる。全曲の多様な演出に対応できるよう、あらゆる種類の装束を常備しなければならない家元の責務の重さは、察するに余りがある。しかも耐久性に乏しい装束は、消耗・新調の繰り返しが宿命である。そうした宿命のもとに、各時代の最高の技術とデザインの粋を尽くした装束が次々と創られて、日本の染織史に不朽の足跡を残す結果を生んだ。とくに観世宗家には、桃山以前から江戸時代を経て明治以後にわたる名品が数多く所蔵され、能の長い伝統を装
束が支えてきた証となっている。その中の一部を選んだこのたびの展示からも、能装束の多様な様相は十分把握できるであろう。
●文献資料
世阿弥自筆の能本、『風姿花伝』を初めとする能楽論書の数々、謡のテキストで能の台本をも兼ねた大虻の謡本、能の演じ方について書きつけた型付類、その時々の番組・書状・系譜などの諸史料等々、先人の書き遺した文献資料こそが能楽の歩みを具体的に物語る足跡である。観世宗家はそうした文献の宝庫で、比肩し得る能の家は他にまったくない。世阿弥筆『花習内抜書』等に残る焦げ跡は、危険
を犯して火中から持ち出すほど伝書を重視していたことを示す。観世家が文献資料の宝庫となった背景にはそんな努力があった。能の歴史をたどれるよう配慮して選んだ三十余点からだけでも、その価値の高さは歴然たるものがあろう。
(収録能面 一部紹介)
掲載能面のすべてに裏面写真あり。
白式尉 江戸時代 河内大掾家重(井関家重)による、弥勒作の写し面
黒式尉 室町時代
父尉 重要文化財 室町時代 伝弥勒作
延命冠者 重要美術品 室町時代
赤鬼 重要美術品
黒鬼 重要美術品 鎌倉時代
大飛出 重要美術品 室町時代
小飛出 重要美術品 江戸時代 出目満志による古作写し
黒髭 室町時代 観世大夫 滋章(花押)
天神 江戸時代
顰 重要美術品 室町時代 伝赤鶴
大べしみ 江戸時代 大野出目家二台有閑作
小べしみ 重要美術品 室町時代 観世家古作
大悪尉 室町時代
小牛尉 重要文化財 室町時代
笑尉 重要文化財 室町時代
中将 江戸時代 児玉朋満作
今若 江戸時代 河内家重写し
邯鄲男 江戸時代 河内家重による古作写し
平太 江戸時代 河内家重作
中喝食 江戸時代
猩々 室町時代 出目久永花押
俊寛 重要美術品 室町時代
小夜姫 重要美術品 室町時代
まさかり 江戸時代
小面 江戸時代 龍右衛門作写之(花押)出目家七代庸久作
若女 江戸時代
いなのめ 江戸時代 出目満真(焼印)
孫次郎 江戸時代
増髪 江戸時代
深井 室町時代
姥 江戸時代
三日月 江戸時代 河内家重写し
阿波男 江戸時代
鷹 重要美術品 室町時代 徳若作
頼政 重要美術品 室町時代
痩男 江戸時代 河内家重写し
橋姫 重要美術品 室町時代
般若 昭和時代 入江美法写し
山姥 江戸時代 河内家重写し