北国の、風のきらめき。エストニアから宝石発掘。ダイヤモンドダストにも似た美しいタッチは驚くべき発見。彼のピア
ノからはジャズへの一途なまでの想いが手つかずの無垢だけをまとって聞こえてくるような気がする。
いやー、とうとうエストニアでっか。しかしこの名前なんて読みまんねん?こんなんばっかりかいな……とこぼしたくな
るのもつかの間、"My Favorite Things"のえも言われぬ絶妙さにひきこまれてしまった。
このピアノ、スウィングする。選ばれた曲はいずれもジャズ・ファン好みで、裏をかえせばプレイヤーの力量が如実に現
れてしまうものばかりだが、誰が聴いても実力のほどは明らかであるはずだ。ホリゾンタルで息の長いアドリブラインと
クリアなタッチは良い意味でエヴァンスを思い出させるが、Tr.1、4や6に付されたとても美しいイントロダクションはそ
れ自体素晴らしい個性だろう。ひんやりした空気感もあって、それがよく似合う。
この人は60年代後期から休むことなく活動を続けていると言うが、東側と呼ばれたその地域ではぐくみ続けた本場ジャズ
への憧れは想像して余りある。彼のピアノからはその一途なまでの想いが手つかずの無垢だけをまとって聞こえてくるよ
うな気がするのだ。
トヌー・ナイソー。ひとつ言えるのは、サワノが見つけなければ、この出会いも永遠になかっただろう、ということ。こ
のことは、さすが、と評価したいし、感謝してもみたい。つくづく思う。ジャズに辺境はない、と。どうせやるならとこ
とん行こう!こうなったらエストニアどころかエチオピアでも南米でも「宝探し」に行ってもらおうではないか。
1. Isn't It Romantic
2. My Favorite Things
3. You Are Too Beautiful
4. With A Song In My Heart
5. Spring Is Here
6. Things Ain't What They Used To Be
7. Close Your Eyes
8. Con Alma
9. In The Wee Small Hours of The Morning