1917年製プリムス96です。デートコードはGです。タンクを支える脚は、折り畳みではなく、固定脚であり、中でもこの年代は馬の蹄を思わせる独特の形状のため、特にコレクターからの人気が高いです。デートコードGは時々、コレクターでもC(1913年製)と見間違う方もいます。判別しにくいところがまた面白いです。
タンクはかなり磨きました。磨けば僅かな傷でもわかりますので、出品者によっては嫌う方もいますが、私はケロシンコレクターなので磨きました。反対に表面を傷めるような材料を使って磨いていないので、刻印等の必要以上な減りはないです。タンク上部のエッジ部分に僅かなあたり傷(写真4枚目の燃料キャップ斜め右下参照)とサイドにも僅かな傷がありますが、全体の雰囲気を損なうものではないと思います。またタンク裏の比較的角に近い部分に目に付く、へこみがありますが、裏ということもあり、あまり気にならないと思います(写真8枚目下部参照)。タンク裏中央だとかなり目立つかもしれませんが、端であったのも幸いでした。またこのタンク裏には過去の所有者がイニシャル(アルファベッド)ようなものを記した部分があります。
タンク本体には製造後のロウ付けなどの補修はありません。当時のままです。これだけ古いプリムス96では、燃料キャップ取り付け基部、ポンプユニットのロウ付け部分、エアー抜き(調整バルブ)の基部、ヴァポライザー取り付け基部などのタンク側に漏れがあり、補修されているものも少なくありません。中にはポンプバルブの取り付け部(底板)からの漏れなど悲しいものもあります。コレクターの目で確認しています。
燃焼は整備してありますので、とても良好です。100年以上前の当時と同じく、轟音を上げて元気に燃焼する様子は、本当に素晴らしいです。短時間での圧抜けなどありません。もちろんポンプバルブ等も外して調整してありますので、不安無く使用できます。ここは必要以上に締め込んでいないので、今後のメンテナンスも楽でしょう。古いストーブはこのポンプバルブがかなり固着しており、精度のあまいレンチでは、頭を舐めてしまいます。
燃料キャップはブラスの質感と共に、深い刻印が見事です。溜息が出ますね。タンク中央のセンターリッドも切れ込みが全体に入っていないタイプで当時のものです。エアー抜きももちろん当時のものです。こんな小さなエアー抜きバルブの上部にも刻印(F)があります。素晴らしいです。
バーナープレートは当時のprimusの刻印だけのタイプです。落ち着いたレタリングデザインも最高です。バーナーベルは、4か所の切れ込みが深いタイプです。後年の浅いタイプに比べ、安定感があります。ヴァポライジングチューブは、primus swedenの刻印がありますが、年代的には少し後のものですね。コレクターなので気が付いた部分は書かせてもらいました。まあプリムス96ではヴァポライジングチューブは完全に消耗品に該当する部分だと思います。使えば穴が拡大し、ガスリッチになりますので。
予熱皿は興味深いのは手絞り加工のような感じがあります。一見すると変形したものを修正した跡に見えるかもしれませんが、同年代の96を複数見ている私には同様の加工を施したようなものを確認しています。それは明らかに職人によるものだと思います。念のため記載しました。風防は鉄製で表面の錆だけで、鉄そのものは薄くなっていないです。鉄でこの状態の良さは、使用頻度が少なかったのでしょう。非常に質感もよいですね。
3本のパンサポートは、当時ものとしてはアベレージな状態でしょう。錆による極度の減りなどもありません。
ポンプノブは当時のローレット加工が美しいです。レンチは表面に錆がありますが、分厚く質感が高いです。
以上状態について説明しました。全体として使用頻度が少なかったことは状態から感じ取れます。
手元に1917年発行のプリムスのカタログがあるので、96の部分のコピー(2枚)をお付けします。このカタログでもわかる通り、当時は箱(鉄製)入りと箱無しの2種類がありました。出品物は箱が無いタイプです。
スタート価格を少し高く感じる方もいらっしゃるかもしませんが、前述したようにロウ付けなどの補修なども無く、完全な稼働品です。未整備品などは仮に少しやすく購入できても、ピンホールなどの漏れなどにより、ロウ付けしないと使えないものもよくあります。コレクターとして、出品物の希少性と完全な稼働品であり、当時のパーツ構成の多くからこの金額とさせていただきました。ケロシンコレクターならその価値をご理解いただけると思います。