
「Invariant Variational Principle」
John David Logan著
書き込み線引きマーカー引き押印等見当たりませんでしたが、目立つものとして
・ページ角折れ(写真7枚目)
ございます。
【本書の特徴】
ドワイト・ノイエンシュワンダーは、その素晴らしい著書『エミー・ネーターの不思議な定理』(2011年)の中で、ジョン・デイヴィッド・ローガン教授を評価していますが、この卓越した単行本を読めば、彼がそうする理由は容易に理解できます。全8章からなるこのスリムな本(全169ページ)には、独自の味わいがあります。ところが、残念なことに通常の雑誌には書評が載っていないのです。
(1)第1章:変分法の基礎とオイラー・ラグランジュ方程式が扱われています。例や注釈、簡単な証明が説明に散りばめられており、章末には14問の問題が用意されていますが、いずれも基本的な練習問題です。そのあと、いよいよ“約束の地”である不変性に足を踏み入れます。「r個のパラメータに依存する変換下における単一次積分の不変性」(27ページ)。
(2)第2章ではエミー・ネーターと、その有名な定理が紹介されます。ガリレイ不変性や粒子力学が取り上げられ、この部分(とても読みやすい10ページ)は第3章への素晴らしい橋渡しとなっています(第2章末の問題も同様に取り組みやすいものです)。短い第3章では、減衰調和振動子の解法に応用されるキリング方程式が紹介されます。続いて、より抽象的で難易度の高い内容として、多重積分の不変性が論じられ(6問の演習問題には、ヒントも付されています)。この箇所では、ゲルファントとフォミン『変分法』(第7章, 1963年)と比較して読むと特に有用です。テンソルが場の理論の議論への導入として扱われています。そして、このテキストのハイライトとも言える部分が現れます。(3)「…場の理論における不変性の考察は、特殊相対性理論の公理から自然に生じる」(76ページ)。前の4章が物理的な動機づけで再構成され、ローレンツ群や電磁場、ヘヴィサイド・ローレンツ単位系が用いられます。物理学者であれば誰もがローガンの明快な解説に精通しているべきでしょう。実際、この部分でアフケイゼル『変分法』(第2章, 1962年)と比較して読むと、いっそう理解が深まります。ここでも章末に13問の問題があり、ほとんどが解きやすいものです。
(4)最後の3章は、難易度が大きく上がりますが、興味深さは損なわれません。物理的な例として振動する棒が登場し、高次導関数を扱うためのKdV方程式が説明されます。さらに、共形不変性についても導入されます。演習問題の1つに「特別共形変換下でのクライン・ゴルドン方程式を検討せよ」というものがあり、「…したがって、ローレンツ変換は共形因子が1の共形変換である…」(139ページ)という記述が見られます。最後に、パラメータ不変性についても導入されており、「…幾何学と相対論的力学におけるその役割は重要である…」(151ページ)という記述があり、以降の内容全体でこの主張が具体的に裏付けられていきます。
(5)こうして、不変性と変分原理という主題のもと、非常に独自性のある一書が幕を閉じます。明快な記述、わかりやすい解説、最小限の前提知識で読める本書と同等に楽しい専門書は、なかなか思い当たりません(ローガンの本はアフケイゼルやゲルファントの素晴らしい教科書と良い補完関係にあります)。簡潔な参考文献リストも、より詳しい(また歴史的な)資料への道標となっています。優れた解説書として、これらのテーマに関心のある方には強くおすすめします。