[商品概要]
昭和36年(1961)発売。2バンド mT管トランスレス5球スーパーです。
寸法と重量:幅436*高156.5*奥137.5mm(ツマミ等、突起物を含まない) 重さ:2.2kg スピーカー:10cm 2個
真空管構成:12BE6/12BA6/12AV6/30A5/35W4
2スピーカーのプラキャビ機で、ボディカラーは「水色」です。
デザインに関しては、個人の嗜好があると思いますが、飽きのこない良いデザインだと思います。
5球スーパーが十分に成熟した時期の製品で、きちんと整備すれば、
本機の持ち味である、「安定な動作とバランスのとれた基本性能」が甦ります。
「スカは引きたく無い」という方にはお勧めできる1台です。^^;
出来るだけ長く使えること、実用的であることを念頭に整備しました。
正しい整備、調整を行ったかどうかは、各種測定をもって可能な限り客観的に検証しています。(写真④~⑥⑫~⑰)
写真の後、整備内容等を記します。[基本説明]と[補足説明]という構成です。
[補足説明]は[基本説明]で記述した事の技術的データや補足説明、根拠を提示しています。
まず、[基本説明]を読んでいただき、ご自分に必要な項目だけ[補足説明]を読んでいただければ結構です。
気になる点があれば、遠慮なくご質問下さい。
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【外観上の留意点】
[キャビネット](写真⑦)
天板にクラックがあります。色が黒だと、研磨でほとんど目立たなくなるのですが、
残念ながら、はっきり見えます。
このクラックは一部貫通していましたので、裏側からアクリルシートで補強しています。
また、天板だけですが、少し変色(黄変)が見られます。
[フロントパネル]
ダイアルスケール(透明の部分)には何箇所かキズがありますが、良く見ないと気付かないと思います。(写真⑦)
透明度は落ちていません。
スピーカーグリルは目立つキズは無く、リブ折れ等もありません。
[金属モール]
研磨していますが、メッキの剥がれ、腐食等見られます。(写真⑦)
[ツマミ]
根元の金属のリングに少しキズがありますが、カケ、割れ等はありません。(写真⑦)
【電気関係の留意点】
電気関係の留意点はありませんが、
チューニングツマミに少し偏芯があります。
シャフトとツマミのかん合部分で偏芯が発生しているようです。
機能的には問題は無く、操作フィーリングの問題ですが、
ゆっくり廻している限りに於いては、偏芯を感じることは無いと思います。
【整備内容】
[キャビネット]
洗浄後、耐水ペーパー、コンパウンドで仕上げました。底面は洗浄のみです。
[フロントパネル、ツマミ、金属モール]
洗浄後、コンパウンド研磨しています。
(内部)
局発のパッティングコンデンサー2個は検査して再利用、
その他のコンデンサー(電解コンデンサー含む)、抵抗、配線は全て交換しています。
[その他の交換部品]
音量調整ボリューム/バリコンの防振ゴム/ダイアル糸/ACプラグ付コード(PSE規格)/ヒューズ/
真空管(12BE6/12AV6/30A5)
音量調整ボリュームの交換に伴う軸のパイプ接続には、2液エポキシと真鍮のノックピンを併用していますので、
接着がとれて空回りする様なことはありません。(写真⑨)
真空管は検査済中古品(写真⑤)、その他の交換部品は新品を使用しています。
[その他の整備内容]
バンド切替スイッチは分解、洗浄(写真②)
バリコン洗浄/バリコンの軸受け部、ダイアル機構のグリスアップ/
真空管ソケット、真空管ピンの洗浄、ピン・ストレートナーによるピン曲がり矯正(写真①③)
スピーカーネット追加(フィルター用不織布)(写真⑩)
※真空管(mT管)のピン曲がり矯正をペンチ等で行なうと、ステムを割ったり、ひびを入れたりするおそれがあります。
ピン・ストレートナーはピンの根元にはストレスが掛からない形状になっていて、安全にピンの矯正が出来ます。
※経験則ですが、スピーカーネットの有無で、コーン紙、エッジの傷み具合に大きな差が出るようです。
スピーカーネットが無い場合は、必ず追加するようにしています。
(新たに付け加えた機能)
[LEDによるダイヤル面の照明]
高輝度広角LED 2個でダイアル面を照明しています。
[電源表示パイロットランプをLEDに換装]
整流管のヒーター断線リスクの低減が一番の目的です。(ヒータータップを使わない)
ダイアル面の照明と共にほぼメンテナンスフリー(今後交換の必要なし)です。
[外部入力端子](写真⑧)
3.5mmステレオミニジャックに換装(出力はモノラル)
スマートフォンやミュージックプレーヤー等、携帯端末の接続を想定しています。
Bluetoothレシーバーも問題なく使用できます。
音量調整は、外部機器側、ラジオ側両方で行えます。うまくバランスを取って下さい。
本機は入力電圧約190mVで無歪最大出力(0.6W)を出せます。
少し音量ボリュームを上げる必要があると思いますが、ほとんどのスマートフォンで無歪最大出力程度は出せると思います。
グランドループアイソレーターでAC100Vラインとは完全に分離していますので、感電の恐れはありません。
※Bluetooth機器(レシーバーも含む)は、技術基準適合証明、または工事設計認証を取得している製品の使用をお勧めします。
(電波法第38条の6第1項、38条の24第1項)
(本機の外部入力は以下の問題に対処しています)
・接続機器のケースが金属の場合、触るとビリビリする(感電)
・接続機器のケースが金属の場合、触るとハムが出る(誘導ハム)
・音楽等プログラムを再生していない時、ノイズが出る(接続機器のクロックノイズ等)
・外部入力端子に何も接続せずに切替えると、大きなハムが出る、
又はハウリングを起す(ラジオ-外部入力の切替方式の問題)
・音楽等のプログラムを再生出来ない(接続機器の保護回路が動作)
[イヤホーンジャック](写真⑪)
3.5mmステレオミニジャックに換装(出力はモノラル/ローインピーダンス型に回路変更)
一般的なステレオイヤホーンが使えます。
オリジナルのイヤホーンジャックを加工してハウジングとして利用しています。
【調整等】
目視による配線チェック/各部電圧チェック(回路図に記載)/IFT調整(写真⑫⑰)/
トラッキング調整/単一調整(1400kHz,12MHzで感度最大)
周波数読み取り精度は、中波(MW)短波(SW)共、実用上十分な精度が出ています。
(1600kHz/12MHzで指針1本分程低い方へズレますが、それ以下の周波数では指針1本分の範囲の誤差に収まっています)
[受信感度](写真⑬⑭)
中波、短波とも、十分な受信感度を有しています。
バンド内の感度偏差も比較的少なく、扱い易いです。
[ハムに関して](写真⑫⑰)
周りが静寂の時、ボリューム最小でスピーカー正面から5cm以内の所でハムを識別できる程度です。
放送受信時には放送波、セットノイズに埋もれて、ハムは聞こえません。
ヒーターが十分に暖まり安定した状態では、耳をスピーカーにベタ付けして、ようやくハムを識別できます。
[音質について](写真⑮⑯⑰)
周波数特性は中音域中心のカマボコ型で、広帯域というわけではありませんが、
結構ボリューム感のある音がします。バランスが良く、聴き疲れしない音です。
(試聴)
[中波帯(MW)]:NHK第一、第二、地元ローカル局、近県の民放局がそれ相応の信号強度で受信できました。(付属の室内アンテナ使用)
[短波帯(SW)]:ラジオNIKKEI、BPM(中国標準時報局)、KBSワールドラジオ(韓国)、Rti(台湾国際放送)
CRI(中国国際放送)等受信できました。 (付属の室内アンテナ使用)
※太平洋地域のパイロット局として利用させてもらっていましたKTWR(フレンドシップラジオ グアム)は
10月をもって停波しました。
(ランニングテスト)
2週間ほど使用していますが、不具合はありませんでした。大変安定しています。
(付属品)(写真⑱)
・室内アンテナ:簡単に脱着できる様、ピンコネクタを付けてあります。掃除の時など便利です。
・外部機器接続ケーブル(3.5mm⇔3.5mmステレオミニプラグ 90cm長で金メッキ、スリムプラグです)
・オリジナルの回路図、整備後の回路図(新規作成CAD図面 A4版)、糸かけ図
・簡単な取扱い説明書
※外部接続機器、イヤホーン、Bluetoothレシーバーは付属品には含まれていません。
出来るだけ長く使えるよう、私にやれることはやってありますが、製造後約60年を経た部品が残っています。永年の保障はできかねます。
電気的な不具合が発生した場合、概ね一ヶ月程度は初期不良として対応いたしますが、その後はご容赦下さい。
今後の修理、メンテナンスについては別途お受けしております。詳しくは取説をご覧下さい。
外観に関しましては、これ以上の術を持ち合わせていませんので、ご容赦願います。
※代理入札、転売されたものであった場合は、初期不良対応も含め、一切のサポートは出来ません。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
(発送)
ヤマト運輸:送料元払い 100サイズ
通常料金より10%の割引になります。
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配達時間指定が必要な方は、お支払い手続きまでに[取引メッセージ]でご連絡下さい。
(こちらからは特にご案内は致しませんので、お忘れなく)
[注意/caution/警告]
このラジオの電源は交流100Vです。交流220Vでは使えません。
This radio is powered by 100V AC. It cannot be used with 220V AC.
款收音机使用100V交流,不能用于220V交流
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【整備内容】
[抵抗]
カーボン/酸化金属皮膜
[コンデンサー]
高周波回路:積層セラミック、ディスクセラミック、スチロール、チタコン/
低周波回路:積層セラミック、フィルムコンデンサー(PET/PP) /
平滑回路用電解コンデンサー:カテゴリー温度105℃/ ACライン間:安全規格 X2クラス認定品
[配線]
耐熱電線(UL3265) /リボン電線使用 JIS 5色法に準ずる線色
[その他の整備内容]
バンド切替スイッチ:接点抵抗は30mΩ以下まで回復しています。(洗浄には接点復活剤は使用していません。)(写真②④⑤)
バリコン洗浄:Qは2000以上まで回復しています。(at 100kHz)(写真④⑤)
[真空管]
gm直読型真空管試験機でチェックしています。(写真④⑤)
検査項目:電極間絶縁/gm値(相互コンダクタンス)/Diode/Rect/ガステスト
ヒーターの起動時間は良く揃っています。
【本機の外部入力仕様】
・ラジオ/外部入力の切替回路 あり
・外部入力時、ラジオ放送の混入防止回路 あり
・音量はラジオ側でも調整可能
・ステレオ→モノラル変換:パッシブミキサーに依り外部接続機器を保護します。
・感電防止:グランドループアイソレーターに依り、AC100Vラインとは完全に分離、絶縁(トランスレスである為)
外部機器と外部入力間の2箇所のインピーダンス接続点は、共に「ロー出しハイ受け」になっており、伝送効率はほぼ100%です。
※インピーダンスマッチング(整合)に関しては、低周波か高周波か、電圧の伝送か電力の伝送か、区別しなければなりません。
一緒くたにするから何でもかんでも「インピーダンスマッチングを取らなければならない」となってしまうのです。
[受信感度](写真⑬⑭)
中波(MW):53uV(50mW/SN比20dB at1000kHz)[実測値]
短波(SW):55uV(50mW/SN比20dB at8MHz)[実測値]
メーカー定格(中波、短波共 50uV/50mW)と比較しても遜色ありません。
[ハムに関して](写真⑫⑰)
広帯域測定で0.5mV、JIS-A測定(聴感フィルター有)で0.1mVです。
トランスレス機としては優秀な値と思います。
[音質について](写真⑮⑯)
帯域幅は特性グラフ内に記載しました。
ラジオの音質としては、周波数特性、歪率、ダンピングファクター等、必要十分と思います。
[本機の電気的諸元](実測値)
受信感度(MW):53uV (50mW/SN比20dB at1000kHz)
受信感度(SW):55uV(50mW/SN比20dB at8MHz)
残留ノイズ:広帯域測定:約0.5mV/JIS-A測定:約0.1mV
中間周波帯域幅:10kHz(-6dB)
中間周波選択度: -20dB(±10kHz)
最大出力: 約0.8W
無歪最大出力: 約0.6W
歪率:約1.1%(50mW時 1kHz THD+N)
ダンピングファクター:0.32(50mW時 1kHz ON/OFF法)
※受信感度の数値は擬似空中線回路網(JIS:C 6102-1:2019)を接続した時の値です。
※測定器類に精度の保障が出来ないものが含まれている為、測定値の精度は保障できません。