;

プレストン・スタージェス珠玉の名作

パームビーチ・ストーリー

1942年パラマウント映画/ユニヴァーサル映画提供

STAFF

監督・脚本・

製作・

音楽

CAST

ジェリー

プレストン・スタージェス

ポール・ジョーンズ・ヴィクター・ヤング

トム・・・

プリンセス・

ハッケンサッカー3世トト

クローデット・コルベール

・ジョエル・マックレー・メアリー・アスタールディ・バリー

シゲ・アルノ

エンドマークが出ても終われない!

笑いが笑いを呼ぶ、ノンストップ・コメディー!

離婚のため、無一文でフロリダへ逃げる妻と、追う夫。

だが妻には次々救いの手が現れ、さらには億万長者が求婚した! 1940年代最高のコメディー監督、プレストン・スタージェスによる、とても楽しい結婚狂想曲。プライドが高くて自分の事業を売り込めず、家賃も払えない夫に愛想をつかした若妻が、離婚を宣言してフロリダのパームビーチへ向かう。夫もすぐ後を追うが妻には億万長者が言い寄っていた。おまけに夫には億万長者の姉から強力なアタックが...。金のない若夫婦を支援する金持ちが次々現れ、それぞれの奇行・奇癖に大笑い。心の底から笑い飛ばして、観た後は楽しく爽快な気分。これこそ喜劇映画のお手本と言える素晴らしい作品だ。 (TK) 〔日本初公開 1948年〕

1995 ARTWORK & DESIGN CINEMA INTERNATIONAL B.V.

オリジナル全長版

字幕スーパー

モノクロ

88分

HiFi-MONO

●おことわり:このビデオカセットに収録されている映像及び音声の使用は、家庭内での利用を目的とする販売及びレンタルに限って許諾されています。このビデオカセット又はその一部分でも複製、変更、又はこれを使用した上映、上演、有線放送及び放送は、法律により固く禁止されています。 ●おことわり:オリジナル・フィルムの状態により、一部お見苦しい部分、お聞き苦しい部分がある場合があります。ご了承下さい。

発売元: CIC・ビクタービデオ株式会社

USL 40217

MADE IN JAPAN

T4988113305143 VHS

80380

解説/日野康一

●プレストン・スタージェスとは?

「パームビーチ・ストーリー」が「結婚五年目」の題名で1948年に初公開されたとき、映画館のプログラムに当時からスタージェスの理解者だった淀川長治氏が問答スタイルで書いておられるのを発見した。

「監督のプレストン・スタージェスって聞かない名前ですが新人ですか?」「いや脚本家として古くから活躍しております。その前はブロードウェイ作家でヒット作をたくさん書いて上演しました」「どんな脚本がありますか?」「アメリカ映画がはじめてナラタージュ手法を用いた「力と栄光」 33、ワイラー監督の「お人好しの仙女」 35 「或る雨の午後」 36 などたくさんあります。監督は「偉大なマクギンティ」 (40年=未公開)からです。原案、脚色、監督をひとりでやってアカデミー脚本賞をもらいました。この人は脚本の着想が面白く、とてもとても奇抜です」

1898年シカゴ生まれ。アメリカとヨーロッパを往復して少年時代を過ごし、成人後は母親が経営する化粧品店を手伝っていた。入院中に戯曲の魅惑にとりつかれ、劇作家として注目される。パラマウントが目をつけて映画界に入り、高額の脚本料を取る売れっ子脚本家になった。脚本家として自作の映画化に不満を抱き、コメディに理解が深いプロデューサーのポール・ジョーンズと組み、「脚本料は1ドルでいい」との条件で「偉大なマクギンティ」を作った。ひとりで脚本と監督を兼ねたのはハリウッドではじめてだった。つづいて94年に日本で“スタージェス祭”として上映された3本「レディ・イヴ」41、「サリヴァンの旅」「パームビーチ・ストーリー」 42と「モーガンズ・クリークの奇跡」 4を含む 8本で才能の爆発を見せた。ジョーンズと別れ、パラマウントを離れてからパッとせず、1959年に亡くなった。生前、日本で公開されたのは「結婚五年目」と「殺人幻想曲」 (48年=リメークは「殺したいほど愛されて」84年)だけ。製作にも進出、出演作もある。

90年ごろから『アメリカ映画の最良の部分のひとつ」と評価されてロカルノ映画祭やニューヨークで大規模な回顧上映が行われ、日本でも“スタージェス祭”が開かれた。

研究書はドナルド・スポトー著「プレストン・スタージェスハリウッドの黄金期が生んだ天才児」(森本務訳・キネマ旬報社)。

●パームビーチ・ストーリーについて

半世紀も昔、有楽町の丸の内名画座で「結婚五年目」を見ておったまげた。あれよあれよと恐るべきハイパワーで突っ走り、映画常識を破壊した。事前に「映画の友」友の会で淀川長治先生から“スクリューボール・コメディ”とは何かと教わっていたが、頭をガツンとブン殴られた過激すぎる刺激だった。

当時の日本の映画マスコミはフランス映画至上主義に支配され、ハリウッド映画、とくにコメディは俗悪とバカにされた。芸術は二の次ぎの洋画ファン雑誌「映画の友」 (対抗して「スクリーン」が創刊された) 編集部では、とっても若かった淀川編集長以下、小森和子おネエちゃま、のちの音楽とオーディオ評論の大家、岡俊雄先生たちが楽しそうに雑誌を作っていた。毎日編集部にを出す30代の双葉十三郎先生は異端のアメリカ映画大好き、字幕作家の清水俊二先生はニューヨーク帰りのパラマウントびいきだった。

タイトルバックがスゴい。ジェリー(コルベール)とトム(マクリー)が驚きあわてて結婚するまでにメイドが3回も卒倒する。なぜかコルベールがふたりいる。ようやく結婚式。「そして末永く幸せに暮らしました」とフツウの映画のエンドからはじまり「ホントかな?」。ラストへの伏線だった。皮肉、パロディ、伏線が縦横に張りめぐらされている。

結婚5年目の倦怠期。ニューヨークの目抜きパーク・アヴェニューの豪華マンションにテキサスのソーセージ成金おじいちゃまが下見にくる。耳がひどく遠い。ジェリーがバスルームで様子を見ていると、おじいちゃまは香水をかぎ歯みがきをなめ、ジェリーに「服を着て風呂場で何しとる。家賃を滞納しとるそうだな」とポケットから分厚い100ドル札のタバを出して気前よく7枚もくれる。当時はすごい大金。高層ビルの間に網の滑走路を張る簡易空港を発明したトムは出資者がなくて経済ピンチ。帰宅して「フロで会った? 何もしないで金くれた?」と嫉妬に燃える。

頬骨が突っ張り、デカいヘッドライトの間が遠いファニー・フェイスのクローデット・コルベールは'30年代から'40年代のスーパースター女優だった。パリ生まれの粋な香気とアメリカ育ちのやんちゃが合体してプロポーションが見事、アカデミー主演女優賞「或る夜の出来事」 34では脚線美でヒッチハイクする芸当を見せた。ジョエル・マクリーは武骨で実直な大作西部劇スター。彼がマトモなほどほかのマトモでない連中が引き立つ。

ジェリーのスペルを変えているがネズミがネコをイビリ、発狂的人気を呼んでいた新聞連載マンガ「トム&ジェリー」 (のちに短編アニメシリーズ化された)のパロディである。 “スクリューボール”はねじれ変化球。 “スクリューボール・コメディ”はひねり都会コメディ。主人公は超リッチまたは一見リッチ風、知性とウィットに富み、お金ときわどいセックスがからんで女性上位、社会のタブーを破るエキセントリックなセリフがマシンガンのように飛び出す。エルンスト・ルビッチ「結婚哲学」24にはじまり、フランク・キャプラ「或る夜の出来事」 34 ハワード・ホークス「赤ちゃん教育」38と「ヒズ・ガール・フライデー」42、そしてスクリューボールの要素を引き継いでいる。 40年代前半のスタージェスが代表作。近年のコメディ映画の多くはどこかで

ストーリーはねじれにねじれて猛スピートで突進する。夫婦喧嘩は離婚に発展、タクシー運転手は「離婚するなら(ネヴァダの離婚都市)リノよりパームビーチ(フロリダのリッチな避暑地)がいい」とすすめる。ジェリーは不良老年の狩猟グループ専用客車に乗せてもらい、特急列車は「或る夜の出来事」のコースを

C&C

逆に北から南へ走る。

酔うほどにハメをはずした団体様は車内で実弾射撃の腕くらべ。一般用寝台車に逃げ出したジェリーは上段に昇ろうとニヤケ男の顔を踏み台にして鼻メガネを踏みつぶす。それは世界一の大富豪、演じるルディ・ヴァリーは鼻メガネが名物の超人気歌手である。大富豪はパジャマ姿のジェリーにネツをあげ、下車して高い服をたんまり買ってくれる。豪華ヨットでパームビーチへ。買ったり食べたものの値段を左手で手帖につける癖があり、合計しない。一方、トムは成金おじいちゃまにヒコーキ賃をもらって先回りする。

パームビーチでジェリーはトムを兄と紹介したため全部がねじれる。大富豪の色情過剰な姉(名女優メアリー・アスター)は愛人同伴なのにトムに一目惚れ、三角関係どころではなくなり、フツウの脚本家では収拾不能な事態となる。トムをジェリーの兄と信じこむ大富豪は離婚寸前夫婦の濡れ場の最中に愛をこめて「グッドナイト・ダーリン」を歌う。

ヴァリーの大ヒット曲である

1948年9月21日、「結婚五年目」として初公開された。

★1941年パラマウント映画日本初公開 1948年9月21日

UNIVERSAL

パームビーチ・

ストーリー

The

Palm Beach Story

[スタッフ]

監督製作脚本

プレストン・スタージェス

影