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この度、数ある指物の中でも類稀なる美しさを誇る、**前田南齋（まえだ なんさい）作の『亀甲花菱象嵌 桑寶石箪笥』**を出品いたします。

前田南齋は、日本を代表する指物師であり、卓越した木工作家としてその名を馳せました。 彼の作品は、数多くの大茶人に愛され、遠山記念館にも多数収蔵されるなど、その芸術的価値は高く評価されています。

本作品は、日本の木材の中でも特に珍重される桑材の美しい木目を最大限に活かした逸品です。 扉の前面には、吉祥文様である亀甲花菱（きっこうはなびし）紋が精緻な象嵌細工で施されており、見る者の心を惹きつけます。 また、底面には「南齋」の銘が確認できます。

共箱の蓋裏には墨書がございます。この墨書は前田南齋のサインのように見えると識者からも意見がございました。一方で、本作品は木部の指物と金具が組み合わされており、合作の可能性もございます。特に銀金具の作者については確証がありませんが、作品全体が有する確かな存在感がその出自の確かさを物語ります。

本作品は、昭和8年（1933年）頃に制作されたと推測される100年近く前の品であり、その時代の空気を今に伝える貴重な美術品です。 初代前田南齋の作品は多岐にわたり、現存する工房でもその全貌を把握しきれていない現状もございます。長年美術品に携わってきた経験から、本作品は初代前田南齋の真作である可能性が高いと判断しております。

出品にあたり、引出しの上段と扉の開閉に若干の難がありましたが、専門家である前田南齋工房に依頼し、丁寧に調整を行いました。 現在は非常にスムーズに開閉いたしますので、安心してお使いいただけます。底にわずかな歪みがあり、若干のぐらつきがございますが、設置に影響が出るほどのものではございません。

この桑寶石箪笥は、その実用性はもちろんのこと、洗練されたデザインと卓越した技術が融合した、まさに「用と美」を兼ね備えた芸術品です。茶室の設えや、大切な道具を収める宝物入れとして、あるいは和室のインテリアのアクセントとして、空間に格調高い趣を添えることでしょう。

前田南齋の確かな仕事が光る、この稀少な機会をどうぞお見逃しなく。

サイズ:

• 幅：約18.5cm
  
• 奥行：約22cm
  
• 高さ：約20.5cm
  

状態:

• 全体的に良好な状態を保っております。
  
• 特筆すべきは、前田南齋工房にて専門的な調整が施され、引出しと扉の開閉がスムーズである点です。
  
• 底にわずかな歪みがあり、若干ぐらつきます。
  
• 詳しい状態は、説明文下の追加画像も合わせてご確認ください。
  

付属品:

• 共箱（箱蓋裏に墨書あり）