『修理』
ポプラ社
足立紀尚(あだち・のりひさ)ノンフィクションライター。
人の仕事や暮らし、社会の中にある「技」や「現場」を丁寧に描く作風で知られています。
『修理』は、壊れた物を直す「修理」という行為を通して、人と物との関係、仕事の誇り、
ものづくり文化の奥深さを描いたノンフィクション作品です。
本書は単なる修理技術の解説書ではなく、時計、家具、衣類、道具など、
さまざまな分野の修理現場を訪ね、そこに携わる職人や技術者たちの姿を丹念に取材しています。
大量生産・大量消費が当たり前となった現代社会では、壊れたら捨てて買い替えることが一般的ですが、
本書はその流れに静かに疑問を投げかけます。
修理の現場では、長年の経験に裏打ちされた判断力や、素材の性質を見極める目、
依頼主の思いをくみ取る姿勢が重要であることが描かれ、修理とは単なる復旧作業ではなく、
物の命を延ばす創造的な仕事であることが伝わってきます。
文章は平易で読みやすく、専門知識がなくても理解できるため、一般読者にも親しみやすい構成です。
また、修理を通じて見えてくる職人の矜持や、物を大切に使い続ける文化的価値は、読後に深い余韻を残します。
物を「使い捨てない」生き方を考えるきっかけを与えてくれる点が、本書最大の長所といえるでしょう。