華麗なメロディーと憂うつな歌詞の間で生まれる緊張を全キャリアを賭けて追及するアーティストたちがいる。かつてスカッド・マウンテン・ボーイズの一員だったジョー・パーニスは、スコット・ウォーカー、スティーヴン・メリット、モリッシーといったその分野の巨匠たちと同列に語られてもおかしくない実績の持ち主だ。これまでに出した7作のアルバムで、パーニスは美しく、ダークで、おかしみのあるポップ/カントリー調バラードに「こんな人生が嫌いだ(I hate my life)」といったコーラスを織り交ぜ、見事な曲づくりの技量を見せた。また、パーニスのつくったビデオは、彼のバンドが道端で死神を助け、一緒にフリスビーで遊ぶという内容だった。
だが、この8作目では、パーニスは今までになかったものを音楽の中に忍ばせている。それは「喜び」だ。「俺を墓から出してくれ(Won't you come unbury me)」――オープニングを飾るパワー・ポップ「Weakest Shade of Blue」で、パーニスはそう歌う。とはいえ、パーニスが突然クリストファー・クロスに変身してしまったわけではない――相変わらず「ベイビーを真っぷたつにしろ(Cut the baby in two)」といったコーラスは出てくる。しかし、本作は概して幸福なアルバムといえるだろう。一方、バックを務めるミュージシャンたちは、ギターがうなるスミスのアンセム、複雑なヴォーカル・パートをもつゾンビーズのガレージ・ポップ、70年代のモワモワとしたサイケデリック・ロックの合流点に新たな可能性を見出している。