藤本阿茶太郎と女房おちえは、似た者夫婦で、何処にで も見られる市井人である。二人のたった一つの悩みは、 十三人も子どもがいることだった。夫婦喧嘩の末、逃げ 帰ってきた長女。戦争へ行ったまま夫が帰ってこない次 女。親父に似て気のいい長男。チャッカリ屋で、 兄を出 し抜いて結婚した次男。さらには、双生児で、年頃の三 女、四女。その次には、 と控えていて、ほとんど気の休 まる暇もない毎日なのであった。
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解
長沖一原作による。 NHKの最高人 気ラジオドラマの映画化である。 花菱 アチャコ、浪花千栄子という、ラジオ そのままのコンピを主役にして、お馴 染みのイメージを壊さぬように配慮さ れ、当時、このドラマが、いかに日本 中の家庭に浸透していたかを窺わせる 作品である。
もちろんラジオ以上の出来栄えにし ようと、ここでは、喜劇映画の神様と でも言える斎藤寅次郎が監督にあたり、 独特のセンスある演出を見せている。
斎藤は、無声映画時代から喜劇一筋 の監督であり、奇想天外なギャグで、 日本中をアッと言わせた作品を、続々 と発表してきている。ここでは、それ
味
が、誰もが知っているホームドラマと 取り組んで、映画版「お父さんはお人 好し」ファンを数多く作りあげること に成功したのである。
実際、アチャコー浪花 斎藤のトリ オで、この後、「かくし子騒動」 「産児 無制限」「優等落第生」「迷い子拾い子」
といった続篇が製作されている。
その他に、監督が青柳信雄に変わっ て、東宝で「家に五男七女あり」「花嫁 善哉」という作品もある。
◎本商品は保存原版から最良の状態で製作し ておりますが、映画公開時より長い年月を経 ておりますので一部作品にはお見苦しい場面 もございます。あしからずご了承下さい。
お父さんはお人好し
3
ヒット曲が生まれ、人気ドラマが映画 化されることになった。
ラジオドラマと映画の関係は、「君の 名は」の大ヒットに象徴されている。
当然ながら、ラジオでは姿が見えな い。ラジオで熱中したドラマが映画化 され、なつかしい登場人物の姿が見ら れることは、たいへんな感激だったに ちがいない。
「お父さんはお人好し」は、数々の流 行語を生んだ。「ムチャクチャでござり まするがな」「わたしどうしましょ」な どである。
花菱アチャコの大阪弁は、スクリー ンの上であの大きな図体によって肉体 性を持ち、いっそう魅力的に輝いたの である。
山根貞男のお楽しみゼミナール
花菱アチャコは横山エンタツと組ん 漫才コンビ”エンタツ・アチャコ として、戦前の一九三〇年代に爆発的 な人気を得た。やがて漫才コンビは解 消したが、映画においてはコンビをつ づけた。そして戦後、ときにはコンピ で、ときには別々にと、スクリーンの 上で活躍した。
一九五二年、花菱アチャコの人気が、 戦前に匹敵するほど急上昇した。NH Kの連続ラジオドラマ「アチャコ青春 手帖」によってである。すぐさまこれ は映画化された。
ついで一九五四年、やはりNHKの 連続ラジオドラマ「お父さんはお人好
し」がはじまり、たいへんな好評を博 した。
花菱アチャコの人気は、これにより、 爆発的なものとなった。
映画「お父さんはお人好し」は、こ うしたなかで生まれたのである。
ラジオドラマは十年以上、五百回も つづいたが、映画のほうも一九五五年 から五八年まで、八作もつづいた。
こんなふうなラジオと映画の関係は、 いまではちょっと想像できない。
当時はまだテレビがなく、マスコミ の中心はラジオと新聞であった。 こと にラジオは強く、人々はラジオを通じ して、歌を、ドラマを聞いた。そこから
■キャスト
■スタッフ
藤本阿茶太郎 おちえ
花菱アチャコ 浪花千栄子 木村精之助 堺駿二 石橋先生 益田喜頓
女子の娘正代 阿井美千子 清二妻スミ子 峰 幸子 次男清二 夏目俊二 長男米太郎 伊沢一郎 次女乙子 桜むつ子 正代の友人照子 若杉曜子 五女静子 中村玉緒 長女京子 朝雲照代 文子 初音礼子
宝石商の主人 東良之助 警察署長
松山健作
岸野為夫
岡野
光岡龍三郎
上田寛
星 十郎
上久保毅
デパートの支配人 西川ヒノデ
古田老人 林家染丸
四男沼吉 西岡タツオ
製作 酒井 蔵 企画 溝口勝美 土田正義 原作 長沖 I 脚本 伏見晁 監督 斎藤寅次郎 撮影●本多省三 録音 林太郎 照明 伊藤貞一 音楽 原 六朗 美術 中村能久
製作主任 竹内次郎
TND9223
昭和30年度作品
55分・モノクロ