天下の奇書! 井上孝の奇想時代小説『壇之浦〇番地』(大澤書房)

天下の奇書! 井上孝の奇想時代小説『壇之浦〇番地』(大澤書房) 收藏

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大澤書房。1959年刊、初版。非貸本。カバーの端に少ヨレ・裂け・剥離、表面にスレ・傷、背の上端に欠損。背表紙の両端に少ヨレ。カバー・表紙・本文ともに経年のシミ・汚れがかなりあり。頁の端に裂け目の入っている箇所がいくつかありますが、いずれも余白部分です。装幀:日下香之介

末永昭二の『貸本小説』のなかでも、「ヘイケガニたちのロカビリーパーティ」の表題で、十数頁にわたって言及されている長編

【内容紹介】
 物語は、壇之浦の合戦で平家一門が完敗し滅亡してから二日後に始まる。長門の国の伊保庄の浦に、桔梗なる鄙(ひな)にはまれな大美人がおり、長者のひとり娘として、早死にした両親から莫大な遺産を受け継ぎ、あまたの召使にかしずかれて、なにかもの足りなさを感じつつも、何不自由ない暮らしを送っていた。その日も桔梗はいつものように、侍女たちをつれて海岸を散歩しに出る。散歩コースの途中の丘に一軒の館があり、そこには与四郎という好男子が住んでいた。いつも首に勾玉(まがたま)のような黄金の数珠を吊るし、笛を吹きながら、うっすらと開けた眸で、すれちがいざまに流し目をくれるとあって、桔梗や侍女らの目に留まるようになり、いまでは桔梗が屋敷に招待することもあった。ところが、その日に限って与四郎の姿は見当たらず、桔梗はやむなく館を通り過ぎて、海岸へと足をのばす。すると、その辺りでは見かけない小舟がうちあげられており、そのなかには平家の戦死者らしき者たちが倒れていた。舳(へさき)のほうでうつ伏せになっているのは、身分あるらしい若侍で、鎧には数本の矢が突きささって折れており、いまなお握られた抜身の太刀は刃こぼれがひどかった。ほどなく、艫(とも)のほうに倒れていた、なぜか褌もせずにイチモツの先のほうを藁シベで結んでいる下人が意識を取り戻し、侍女たちが悲鳴をあげるなか、主従ともども空腹のあまり気を失っていただけだというその説明を聞き、桔梗は、まだ意識の戻らないその飾磨の小次郎盛次なる若侍を、おつきの下人の星若と共に、屋敷へと運ぶ。
 傷も癒えたあと、類まれな美男子の小次郎と桔梗とは結ばれるが、その披露宴のさなかに竜神の嵐が襲来し、小次郎も桔梗も海にのみこまれてしまう。生き残ったのは、海難除けのおまじないである藁シベをこの日もイチモツの先に結んであった、海賊あがりの星若と、その足にしっかりしがみついていた桔梗の次女の楓だけで、すべてが海の竜神の化身たる与四郎の仕業であることを察知した星若は、名前を宗房と変えて、竜神与四郎の神通力のおよばぬ深山に楓を連れてもぐりこむと同時に、その山塞を根拠地に源氏の動静を探るべく、ワラシベ党を結成。すると、壇之浦にふたたび大きな動きがあり、平家と共に沈んだ草薙の剣、すなわち三種の神器のひとつの探索が行なわれようとしていることがわかってくる。
 このあと、伊佐の八郎維清と名前を変えている竜神与四郎との再会をはたした宗房は、憎っくきかたきの口から、とんでもない事実を聞かされる。海にのまれた小次郎は平家蟹に変えられ、壇之浦の海底に放たれたというのだ。桔梗のほうは人魚となり、瀬戸の内海を泳ぎまわって、小次郎を捜しているという。やがて壇之浦では、月夜の晩に美しい人魚が現れ、そのフックラした腰のあたりに一匹の平家蟹のまとわりついているのが、老漁師に目撃される。そんななか、邪悪なる竜神与四郎は、最初に横恋慕した桔梗を人魚のままで逃がしてしまった腹いせに、海に沈んでいた平家の女房女官を次から次へとそっくり貝に変えていく。そんな竜神与四郎のかけた術も、物語に深い関係のある尼僧の写経が海に投ぜられたことで解け、そっくり貝は全裸の女房女官に、平家蟹は武者たちに戻り、壇之浦の海底では、武者たちの世紀の海底ロカビリーやら、女房女官たちの裸の乱舞といった、一大狂躁曲がくりひろげられる! 何百何千という男女が海底で乱舞するありさまは、まさしくカオスで、エロスとファンタジーとブラックユーモアとギャグと奇想とが渾然一体となった唯一無比の物語は、壇之浦での草薙の剣をめぐる争奪戦でクライマックスを迎える。
 さまざまな人間に化しては、魔力を用いて悪魔の所業を積み重ねていく、竜神与四郎の存在感がなんといっても際立っており、星若らのイチモツの先に結んだ魔除けの藁シベによって、その術がきかなくなるという、奇想天外な設定も面白い。アップテンポでおちゃらけた文体も独特で、「飾磨の小次郎盛次こそ、世にも類稀れな美好男混合子であった。読者、想像されよ。すなわち、言うなれば、錦ちゃん、裕ちゃん、池部良、宝田明、そして斯くいう筆者など、当代一流の美男子好男子を足して掛けて、筆者を減(ひ)いて、それから三で割ったくらいの、全くもって筆舌に絶した男ぶりこそ憎ッくけれ」といった、通常の時代小説ではありえないような表現も頻発し、それが逆にたまらない魅力になっている。

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出价者 信用 价格 时间
m_m******** 333 48500最高 07/27/2025 22:08:32
モロボシダン 65 48000 07/27/2025 22:13:32
kgk******** 473 16500 07/27/2025 22:04:01

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