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豊臣秀長遺物『備前国長船元重』前田家伝来 本阿弥光忠折紙 刀苑社最上作認定書 太閤秀吉より前田利家拝領の太刀 古鞘書と近藤鶴堂鞘書


備前長船派の元重は鎌倉時代末期から南北朝時代中期の貞治頃まで
活躍しました。古来より刃味に定評があり江戸時代には最上大業物に
指定されて非常に人気を博しました。新作に近い方が有利とされる刀剣の切れ味に
おいて製作から300年ほど経過していた鎌倉南北朝時代の元重が選ばれたのは
並大抵の事ではないと思います。相州貞宗に学んだとも言われており貞宗三哲の
一人にも挙げられています。同時代の長船を代表する名工です。
この刀は鎬造、庵棟、身幅尋常、元先の幅差がつき、元重ねやや厚く、
反り高くつき、中切先となっています。まさに優美といった太刀姿に
なっていると思います。鍛えは板目肌に杢が交じり、地沸がよくつき、
映りが現れて備前物らしい鍛えになっていると思います。刃文はのたれに
互の目や丁子を交え、足や葉が入って、小沸がついて、金筋や砂流しが
かかっています。帽子はのたれ込んで先は掃きかけています。茎には
備州長船住元重の銘があります。古い時代の太刀に稀にある刀銘でおそらく
注文打と推測される作品です。豊臣秀長は太閤秀吉の弟で大納言となり、
大和、紀伊、和泉国などを有して石高は100万石を超えたので大和大納言とも称されました。
秀吉からは公儀の事は秀長へと言われていた程に信頼されていました。秀吉を
よく補佐し天下統一に貢献しました。残念ながら兄より先に亡くなってしまい、秀長
存命であれば豊臣家の行く末も変わっていたとも言われる人物です。その秀長の形見で
古くからの友人であった前田利家に贈った太刀です。折紙は本阿弥家十三代目光忠です。
彼の発行した折紙はその精度から非常に権威があり現代でも古折紙と称されています。
昭和名物の編集で知られ昭和を代表する鑑定家の一人であった村上孝介が主宰した刀苑社の
最上作認定書が付属しています。古鞘書には大納言秀長の腰物で利家が秀吉から拝領した
事が書かれています。裏には刀剣研磨の名人で鑑定家でもあった近藤鶴堂の鞘書があります。
長船元重の傑作であり素晴らしい伝来で歴史的資料価値も高い名刀と評価できると思います。

長さ/69.0cm　反り/3.0cm
元幅/27.6mm 元重/6.2mm 先幅/15.0mm 先重/3.6mm 刀身のみの重量465g
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